養蚕から繰糸機まで日本の栄光たどる 国内最古級の東京農工大科学博物館
150周年を記念して、壁に掛けて教材として使う大判の絵図である「教育掛図」の展示が5月から始まった。「植物学教授用掛図」(明治35年発行)には、植物の花や実の形態を説明する図や、農産物に被害を及ぼす菌類の顕微鏡拡大図などが、精密に色鮮やかに描かれている。
まさに植物学者の牧野富太郎が活躍した時代、日本の植物学の黎明期に教育を支えた貴重な資料で、学生の学芸員実習に現在も使われている。今後、養蚕に関連した掛図も展示される予定だ。
大正3(1914)年に東京高等蚕糸学校となり、昭和15(1940)年には現在の地に移転した。敷地は現在の小金井キャンパスとほぼ同じで、当時はその半分ほどが桑畑だったという。数十年前に姿を消したが、周年記念事業として、科博前に小さな桑畑が復活した。
学芸員の上田裕尋(ひろちか)特任助教は「蚕を飼育する子供たちに提供するなど、教育活動に生かしていきたい」と話した。
日本の蚕糸業は縮小したが、シルクを使った新材料開発など、新しい産業への期待もある。中沢教授も人工血管などに応用する医療向け材料を開発する研究者だ。過去の産業の栄光を懐かしむだけでなく、未来の可能性も感じる見学だった。(松田麻希)