定年近くになったら「バス運転手」も選べます…消防職員のセカンドキャリアに 人手が不足するバス会社と消防本部が打ち出した妙案
長野県の南信州広域連合と信南交通(飯田市)は、一定年齢に達した飯田広域消防本部職員のバス運転手への転職を支援する協定を結んだ。新型コロナ禍や時間外労働時間の規制強化の影響で不足する運転手を確保し、地域の公共交通維持につなげる狙い。 【グラフ】「いつまで働きたい?」アンケートで「定年まで」は28・8%
段階的に定年が延長される消防職員のセカンドキャリアの選択肢を用意する意味合いもある。
転職支援は、50歳以上63歳以下の消防職員が対象。信南交通が希望者と面接して採用を決めた後、広域連合は退職までの間、大型2種免許取得のための休暇取得の調整などで協力する。信南交通は、正社員か嘱託社員として最長70歳まで継続雇用する。
バス会社は人手を増やしたい
信南交通によると、同社のバス運転手は現在約50人で、新型コロナ禍前より20人ほど減少。路線バスの減便などの影響が出ている。路線バスや高速バスへの乗務が優先され、修学旅行など地域の貸し切りバスの需要には十分応えられていないという。
大型車両の運転と地理に詳しい経験生かせる
一方、消防職員は法改正に伴い、60歳だった定年が2023年度から隔年で1年ずつ延長されているが、年齢を重ねると体力面で不安を訴える職員もいる。バス運転手は、大型車両の運転経験があり、地域の地理に詳しい消防職員の経験を生かせる―として、広域連合と信南交通の思惑が一致し、協定が実現した。
飯田市役所で開いた調印式で、信南交通の中島一夫社長は「厳格な姿勢で安全を守る仕事に携わってきた消防職員は、バス運転手に向いている」と期待。佐藤健連合長(飯田市長)は「この制度が地域の公共交通維持につながってほしい」と述べた。