控訴状を長崎地裁に提出した原告団＝長崎市万才町、同地裁前

　国が定める地域の外で長崎原爆に遭った「被爆体験者」が、長崎県と長崎市に被爆者健康手帳の交付を求めた訴訟で、原告の一部を被爆者と認めた長崎地裁判決を巡り、県と市は２４日、福岡高裁に控訴した。大石賢吾知事と鈴木史朗市長は県庁で原告らと面会し「上級審で再度しっかり審議してもらい、救済範囲の拡大につなげる」などと控訴理由を説明。県市の対応を受け、原告側も同日、控訴した。 　訴訟は、体験者４４人（うち４人死亡）が県市に手帳交付などを求め、交付事務を県市に委託する国も訴訟に参加。長崎地裁は９日、爆心地東側の３地区（旧矢上、旧古賀、旧戸石の３村）の一部に黒い雨が降ったと認定し、３地区にいた原告１５人（うち２人死亡）に限り手帳交付を命じた。 　岸田文雄首相は２１日、全ての体験者を対象に、医療費助成を拡充し、被爆者と同等とする救済策を発表。地裁判決については控訴する方針を示し、「被爆者認定」を望む原告らは救済策と控訴方針の双方に反発の声を上げていた。 　両首長は「地裁判決の事実認定が、先行の最高裁判決と異なること」「地裁判決の内容では、手帳を交付すべき統一基準を作るのが難しいこと」の２点を、国が控訴理由として挙げたことを原告側に報告。大石知事は救済策について「早期の実施に向け、国と調整したい」とした。 　面会後に原告側も控訴。岩永千代子原告団長（８８）は「こうなったら命懸けでやれるところまでやりましょう」と話し、原告側の三宅敬英弁護士は「（控訴審の）争点は地裁判決の相当性、妥当性になる」と述べた。三宅弁護士によると、敗訴原告のうち死亡した１人は、遺族の意向で控訴手続きが取れなかったため、原告は４３人になる見通し。