大山山麓の自然を生かした「東伯和牛」 地域ぐるみで創り上げたブランド価値
生産から消費まで一貫体系
JA鳥取中央は和牛肥育を手がける琴浦町の(有)とうはく畜産と一体となって、地域ブランド「東伯和牛」の生産から消費までの一貫体系を、地域ぐるみで整える。大山山麓の自然豊かな環境で生産し、消費者が好む、うま味や脂肪交雑(さし)の入りを実現。安定した品質や肉質の柔らかさを含めたブランド価値を高めている。 【画像】希少部位を感じる「東伯和牛」専門焼き肉店のテールラーメン 「東伯和牛」は、ミネラル豊富な大山の伏流水などを活用し、30年以上にわたって生産する。JAが2007年ごろに商標登録。生産者の徹底した飼育管理と肥育技術によって、販売する和牛肉の格付け等級はA5が9割を超える。安定した品質と肉質の柔らかさに加え、色鮮やかな肉色が特徴だ。 「東伯和牛」の生産は同社が担い、和牛肉のうま味が増すように牛へ与える飼料にこだわる。濃厚飼料の基礎はJA西日本くみあい飼料に製造委託し、5種類前後の食品残さを加えたものを基準にする。出荷前の10~12カ月にサツマイモを加えた仕上げ飼料を与え、脂のうま味を高める。 一方、粗飼料は米国産乾牧草と中国産稲わらを独自に輸入する。20年以上契約する現地農家にカットする長さや繊維の状態などを細かく要望し、農場向けの品質を確保する。
生産者とJAが密に連携 産地発展につなげたい
同社はJA全農ミートフーズを通じ、年間900頭の「東伯和牛」を出荷。山下卓雄会長は「消費者が求める味を第一に『東伯和牛』の魅力を全国に届けていきたい」と話す。 JAは、とうはく畜産が和牛生産に専念できるよう、導入出荷やデータ集計を手伝う。もと牛を導入する際の事務作業を代行して負担を軽減。出荷時には、枝肉の格付けや販売状況などを1カ月ごとに集計し、畜産経営に役立てる。データを基に、同社の事業もJAが共に計画する。 販売では、JAが全農ミートフーズと小まめに協議。有利販売に向け富裕層をターゲットにし、首都圏の高級スーパーに10年以上出荷を続ける。JA畜産部の門木茂彰部長は「生産者とJAが密に連携し、産地発展につなげていきたい」と意気込む。 「東伯和牛」を味わえる店舗の一つ、倉吉市の焼き肉屋「焼肉どばし」のオーナー、土橋繁幸さん(39)は「品質にブレがなく安定しているため信用できる」と評価する。
日本農業新聞