【連載】言の葉クローバー/Novel Core 観るたびに感動の涙を流す『ターミナル』
心を揺さぶられたり、座右の銘となっている漫画、映画、小説などの1フレーズが誰しもあるはず。自身の中で名言となっている言葉をもとに、その作品について熱く語ってもらう連載コラム『言の葉クローバー』。今回は、1月18日にニューアルバム『HERO』をリリースしたNovel Coreが登場。何度観ても毎回感動し、人生で一番好きだという映画のセリフについて語ってもらいました。
----------------------------------- 家に帰るんだ 映画『ターミナル』 -----------------------------------
譲れないものを守り抜いて生きることの美しさを感じた
『ターミナル』は、「観たほうがいいよ」って小学生の頃に父親が教えてくれて、DVDで初めて観たんですけど、これは人生で一番好きな映画ですね。僕、映画好きでいろんな作品を観るんですけど、いまだに一番好きな映画だし、これはもう一生塗り変わらないような気がしてます。 トム・ハンクス演じる主人公の父親が熱狂的なジャズファンで、長年かけてニューヨークのジャズマンたちのサインを集めて、それを缶に保管してたんだけど、あと1人から貰えばコンプリートっていうところで亡くなってしまって。主人公が、残り1人のサインを手に入れるためにアメリカに向かってる途中、母国でクーデターが起きてパスポートが無効状態になってしまうんです。それでアメリカに入国も、アメリカから出国もできなくなって、空港で何年も生活するっていう話で。空港で生活していく中でいろんな人と出会って、関係を築きながら、最終的にはニューヨークまで行って、ジャズマンのサインを貰って缶に入れることができるんです。 映画のラスト、主人公が、サインを貰った帰りに乗ったタクシーの運転手に「どちらへ?」って聞かれて、答えた言葉が「家に帰るんだ」なんですけど、もうこの一言にすべてが詰ってるなって思うんです。 他人から見れば、ジャズ・ミュージシャンのサインをもらうことが、何年も空港で生活してまでやりきるべきことなのか?って話じゃないですか。でも主人公にとっては、亡くなった父親との約束であり、それを果たすことが彼の生きる目的にもなっていて。それをやりきるために空港で生活し始めた男が、目的をちゃんと達成して「家に帰る」って言い切れる、その強さ。 目的をやりきること、そこに人生があるんだなって思ったし、周りから見たら取るに足りないことであったとしても、自分にとってこれだけは譲れないっていうものを守り抜いて生きることの美しさをすごく感じた、そういうセリフなんです。あと、誰でも言える何でもない言葉を、映画をもってして意味を持たせる脚本も含めて、とても美しいなと思いますね。 この映画は、たぶんもう70回以上観てるけど、毎回観るたびに感動してます。どういうタイミングで『ターミナル』を観るのかというと、泣きたい時。泣きたい時といっても、悲しみに浸りたくなってとかではなく、人生だったり、人情みたいなものを感じてグッとくるような、そういう涙が欲しい時というか。やっぱりシンプルにいいものを観て、涙を流したりすることってすごく大事じゃないですか。そういう感動が欲しい時に必ずこの作品を観ますね。そして毎回100%泣いてます(笑)。 『ターミナル』監督:スティーヴン・スピルバーグ 『プライベート・ライアン』『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』でタッグを組んだスティーヴン・スピルバーグ監督と名優トム・ハンクスが、三たびの顔合わせとなったユニークなヒューマンドラマ。アンドリュー・ニコルとサーシャ・ガヴァシによる原案から、ガヴァシとジェフ・ナサンシンが脚本化。実話をもとに、空港内に長期間に渡り足止めされてしまった男と、空港で働く人々との交流と恋模様が描かれている。2004年日本公開。