東大名誉教授・井上達夫が喝破…岸田総理が「好きなときに解散総選挙できる」今のしくみは「憲法違反」である
一票の格差と政党交付金
しかし、首相に無制約な解散権を与えるのは「国会は国権の最高機関である」とする憲法第41条に違反しています。天皇の儀礼的行為を定めたにすぎない7条を曲解し、これを認めた最高裁判決は憲法解釈として大間違い。野党議員は、60年以上前のカビの生えたこの判例の変更を求めて訴訟をすべきです。 二つ目の問題は、「一票の格差」。東京など大都市部と地方との間には、一票の価値に衆院選で約2倍、参院選で約3倍の開きがあります。自民党支持者の多い地方のほうが、一票の価値がはるかに高いわけです。 参政権の平等を侵すこの状況を、最高裁は「違憲状態だが違憲ではない」などの屁理屈で放置してきた。かりに格差のひどい選挙区で選挙をやり直しても、衆院には比例代表部分があり参院は半数改選ですから、国会の空白化は起こりません。 有権者は最高裁の姿勢を正すために、今後も憲法訴訟を続けるべきです。
野党は本気を示せ
三つ目が政党交付金の問題です。昨秋、前原誠司氏が国民民主党から分裂して急造した新党は、国会議員5人で1億1800万円を受け取りました。ミニ政党でも多額の交付金がもらえるので、野党はまとまる必要がない。 他方、権力維持のための結束を本能とする自民党は、圧倒的な巨額の交付金を受け、一強多弱が促進されている。政党要件を厳格化し、小党乱立を抑制するべきです。 どんな政党も、権力の座に安住すれば腐敗します。与党を政権から放逐して失政悪政の責任をとらせられないなら、民主主義は形骸化してしまう。 野党には、いまこそ結束して政権奪取の本気を示せ、と檄を飛ばしたいと思います。 「週刊現代」2024年6月22日号より ・・・・・ 【さらに読む】「日本が変わるには戦争が一番のチャンス」「将来アメリカは日本を見捨てる」...“革命家”外山恒一が「日本政治の絶望的状況」を前に明かす《真意》
週刊現代(講談社)
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