吉本芸人・しずるーー40代でも稽古で怒られて…。〈今年はライブに役者業に過密スケ〉
――役者として舞台に立つとき、芸人としての気持ちと何が違いますか? KAƵMA やっぱり、好き勝手にボケようとは思わないですよね。お客さんに笑ってもらえればいいってわけじゃないし、それぞれが与えられた役割をまっとうすることで、一つの舞台ができあがるから。誰もセリフを守らない、しっちゃかめっちゃかなアドリブ劇だったら、もうちょっと自由にやると思うんですけど。稽古中も、みんなしっかり、ちょっと怒られてるし。 村上 しっかりちょっと?(笑)。 KAƵMA (笑)。怒られたり、怒られているのを見たりすると、やっぱりちゃんとしなきゃって引き締まりますよね。 村上 まあ、不条理と言いつつ、戯曲の枠組みはしっかり固まっていますからね。何日も何度も稽古を重ねたうえで完成させるものだから、コントで毎度投球してふりかぶって、みたいなスタンスとはやっぱり違います。なんてったって、舞台は下北の本多劇場ですよ。演劇の本場じゃないですか。TPOは考えちゃいますね。……ああ、でも、はる(エルフ)だけはコントっぽいな。ふざけてるわけじゃないし、しっかり芝居はしているんだけど、たたずまいだけで笑っちゃう存在感があるんですよね。それは舞台でも変わらない。 ――たたずまいの面白さって、唯一無二の武器ですよね。 村上 そうなんですよ。でも演じるのは「女1」で、名前のない役なんです。それなのに登場するだけでおもしろいって……あの空気感、腹立つわあ。笑わずにいられませんもん。 KAƵMA 芝居でもそりゃ、笑ってもらえたらうれしいけど、僕がメトロンズで脚本を書くときもボケはあんまり入れないですね。そこはコントとのいちばんの違いかもしれないです。 村上 コントは基本、“笑い待ち”なんですよね。コント全体がおもしろかったかどうかではなく、細かくネタを挟み込んで、ある意味狙い通りの場所で笑ってもらうのを全体で重ねていく。でも舞台は、お客さんがどう反応するか未知だし日によっても違ったり。いずれにしても、見終わったあとに「ああ、よかった」と思ってもらわなきゃいけない。 KAƵMA 舞台にボケを入れすぎると観ている側が疲れて、1時間半や2時間の長尺に耐えられない気がするんですよね。人って、笑うのに意外と体力を使うんです。口を開けて、声を出して、体を揺らして。たまに、笑ってあげなきゃみたいな気の遣い方もしてくれて(笑)。だから今のところ、舞台の脚本にはわかりやすいボケを入れないようにしています。まあ、どっちの現場も違う面白さがありますよね。 しずる 2003年結成。2008年より「爆笑レッドカーペット」(フジテレビ系)に出演し、“青春コント”で人気を博す。2009年にはコント番組「爆笑レッドシアター」(フジテレビ系)のレギュラーメンバーに選ばれた。「キングオブコント」では四度決勝進出。2009年には3位を獲得した。2019年、同じく芸人のライスとサルゴリラ、作家・演出家の中村元樹による7人組演劇チーム「メトロンズ」を結成。