埒が明かない学歴詐称問題...相互に関連し合い、一貫性もある「留学記録」を議論の出発点に
<たくさんの記録が残るはずだが>
もっとも、筆者が大学に職を得るまでにケンブリッジ修了から7年かかった。自分の非力を感じ続けた7年だった。 それはさておき、ここまで説明してきた通り、留学すれば、たくさんの記録がついてくるはずである。しかもそれは一つ二つではなく、相互に関連性があり、一貫性もある多数の記録だ。それを知ってほしくて筆者の留学記録を公開した。生産的な議論や留学の計画には、事実を正確に知ることが有益だと考えたからだ。 こうして振り返ってみると、犯罪機会論に出会ったケンブリッジ大学が、筆者にとって犯罪学者としての出発点だったことは間違いない。にもかかわらず、30年を経ても犯罪機会論の普及は牛の歩みにも及ばない。まさに「任重くして道遠し」である。だが、それでも前を向いて進むしかない──。
小宮信夫(立正大学教授[犯罪学]/社会学博士)