辛口ウォッチャー3人が忖度ナシで語る!'24春「本当に見るべきドラマ」絶対おススメの3作品
今期は「記憶喪失」が多い
島田薫(芸能リポーター) 春ドラマの第1話の世帯視聴率を見ると、トップは木村拓哉(51)主演の『Believe―君にかける橋―』(テレビ朝日系)で11.7%ですね。その理由はもちろん、キムタクへの注目と、豪華キャスト陣ですよね。北大路欣也(81)や小日向文世(70)、斎藤工(42)や竹内涼真(31)など、1カットごとに有名俳優が出てくる。 【まだ間に合う!】春ドラマ注目作品 「初回視聴率&TVer登録者数」リスト…! 今井舞(コラムニスト) キムタクと天海祐希(56)のトップスター同士の夫婦役が楽しみと放送前から盛り上がってたけど、身長差にヒヤヒヤさせられますね。SNSにあがっている番宣動画でも″キムタクのほうが公式プロフィールでは身長が高いはずなのに小さく見える″と他の俳優との身長差が話題になっています。 桧山珠美(コラムニスト) このドラマのキャストは当初、『VIVANT』(TBS系)みたいにキムタクしか出演者の情報が解禁されていなくて、共演者は謎だった。でも全然話題にならなかったですね。脚本は「緊急取調室」シリーズや「BG~身辺警護人~」シリーズを手がけた井上由美子さんだから、ストーリーはちゃんとしてるとは思いますけどね。 今井 ジャニーズ性加害問題を受けて、元々予定していた脚本が白紙になり、テーマが決まったのが今年の1月。突貫工事すぎちゃってるから、細かい設定がちゃんとしていない。第1話で主人公がパソコンに残っていた証拠を消すシーンがあったけど、データはサーバーに残ってるし、ゴミ箱に入れたくらいでは復元できますよ。今の日本の科学捜査なら。 桧山 橋の建設現場で事故が起きたら、部長とはいえ、ゼネコンの担当者一人だけが実刑になることはありえない。 島田 今クールは、ありえない設定がいっぱいありますよね。一番はやっぱり、「記憶喪失」じゃないですか? 今井 記憶喪失モノは今期5本もあります。『Re:リベンジ―欲望の果てに―』(フジテレビ系)では赤楚衛二(30)が演じる主人公が何者かに襲われて第2話で記憶喪失になる。この主人公、何ヵ月も寝たきりだったのに、いきなりむくっと起きて、つかつか歩いたり。髭は伸びてるけど、髪は伸びてなかったり……ツッコミどころが多すぎます。 島田 『Re:リベンジ』はオリジナルストーリーですが、今期はオリジナル作品が多いですね。 桧山 日テレで原作モノが大トラブルになったからじゃないですか。 今井 それもあるかもしれない。あと川口春奈(29)の『silent』(フジ系)がデビューしたての脚本家のオリジナル作でヒットしたから、期待しているんじゃないですか。 島田 オリジナルって女性人気が高い気がします。男性って大河などの歴史モノとか、漫画原作とか、先が見えてるものが好きじゃないですか。一方で女性視聴者は先が見えないもののほうが好きなのかもしれません。 桧山 それにしてもオリジナル脚本で記憶喪失が被りすぎですよ。月9ドラマの『366日』(フジ系)もそうでしょ? 島田 高校時代、両思いだったもののスレ違いで恋人になれなかった広瀬アリス(29)と眞栄田郷敦(24)が大人になって再会。思いが通じ合った途端に郷敦が事故で寝たきりに……って二人とも演技が上手いんだけど、話の展開が悲惨すぎる。郷敦は表情で見せる役者。目をカッと見開いてこそなのに、いつまでベッドで寝かせてるんだと思って。 桧山 挙げ句の果ての記憶喪失でしょ。 今井 挙げ句の果ての高校生役ですよ。回想シーンでちらっと出てくるだけなのかと思ったら、いちいちプレイバックして、いちいち長々と。 桧山 着想はHYの名曲『366日』。失恋を歌う曲ですね。フジテレビは『silent』でヒットを当てたから、主人公が辛く苦しい目に遭うような、″せつな系″のドラマでいけるぞと思っているんじゃないかな。 島田 確かにせつな系が続いてますね。前回の月9『君が心をくれたから』もそうでした。でも、最終回でさえ世帯平均視聴率6.6%とヒットはしなかった。 桧山 せつな系の成功体験はもう捨てないと。しつこくこの路線が各局で続くと視聴者がいなくなりますよ。 島田 郷敦は、二階堂ふみ(29)とガンちゃん(岩田剛典・35)が一緒に出ていた『プロミス・シンデレラ』(TBS系)や、長澤まさみ(36)主演の『エルピス―希望、あるいは災い―』(フジ系)などいい作品が続いていただけに何だかもったいない。 今井 だって演技のしようがないもん。ずっと寝てるから(笑)。やっぱり脚本がね。アラサー高校生と韓国ドラマ定番の記憶喪失じゃ変な幕の内弁当ですよ。 桧山 こちらも記憶喪失モノだけど、『くるり~誰が私と恋をした?~』(TBS系)は面白く観てるんです。どうですか? 島田 主演のめるる(生見愛瑠・22)は意外と演技の幅が広いですよね。 桧山 TBSの火曜22時枠は女子喜ばせ系のドラマが多い。『逃げ恥』もそうだったし、深キョン(深田恭子・41)と横浜流星(27)の『初めて恋をした日に読む話』も、二階堂ふみと郷敦の『プロミス・シンデレラ』もそう。 島田 『くるり』は相手の男性が3人出てくる。タイプが選べるのもいいですね。 今井 恋愛ゲームみたいな。 桧山 そしてみんな「私」が好き。少女漫画によくあるパターンですね。 今井 同じTBSの『9ボーダー』も記憶喪失モノ。こっちは記憶を無くした松下洸平(37)が道端でギターを弾き語っていて、立ち止まってくれた川口春奈の手をいきなり掴んで「僕のこと知っていますか」と聞く……。出会いの設定があまりにも唐突すぎます。 桧山 そして恋に落ちる(笑)。記憶喪失の要素を除いてもかなりカオス。今までだったら一人のヒロインで成立してたけど、それじゃもう見てもらえないから『9ボーダー』は幅広い世代を狙って19歳、29歳、39歳の3人の主人公を用意した。 今井 川口以外は木南晴夏(38)と畑芽育(22)と実力派が揃っていますが、3人もいると内容が薄くなるんですよ。全ての話が中途半端。しかも19歳の描き方が”浪人生でマッチングアプリで出会ったばかりの男にプロポーズされる”と、実際の19歳とかけ離れてます。中年が考える19歳ですね。 桧山 フジもTBSも、同じ局でなぜ記憶喪失モノを何本も作るんだろう。そこ話し合えばいいのにと思いました。 島田 女子喜ばせ系で言うと、永瀬廉(25)と板谷由夏(48)の『東京タワー』(テレ朝系)は観ましたか? 今井 はい。年上の女性と若い男のラブストーリーは珍しくていいんだけど、内容はビックリ。車の下に猫がいて、救出してくれた大学生の永瀬に「うちの事務所にシャワーがあるけど浴びてく?」って建築家の板谷が声をかける……AVの行為に入るまでの早送りする部分を見せられてるみたいで苦笑するしか(笑)。脚本が乱暴すぎますよ。あまりに現実味のない話は引き込まれないって。 ◆記憶喪失でもリアリティが重要 今井 記憶喪失の話に戻るけど、杉咲花(26)主演の『アンメット ある脳外科医の日記』(フジ系)はすごくよかったですよ。私の今期1位はこれです。若葉竜也(34)は本当にいい役者です。 島田 彼は子役をやっていましたね。作りすぎない感じがとにかく自然で見ていて気持ちいい。普段、民放であまり見ない俳優だからこその面白さもあります。 桧山 新鮮味がありますね。ジャニーズの問題がなければ、若葉なんか絶対に相手役になれなかったんだろうに(笑)。 島田 杉咲は前にも『恋です!~ヤンキー君と白杖ガール~』(日本テレビ系)で目が見えにくい女性を演じていたけど、今回は一日しか覚えられない記憶障害。もう地獄じゃないですか。でも、彼女が演じる障害者はあんまりマイナスの印象にならないんですよね。役者として不思議な魅力があります。 今井 暑苦しくなく″一生懸命″を演じるのが上手いですね。 桧山 本当にそんな役ってありえるの?って思う役を彼女がやることによってリアリティが出るっていうのはあるよね。 今井 内容の作りも非常に丁寧ですね。病気のリアルをきちんと描けているし、「病気と共存して生きていく」というメッセージが込められていて暗すぎない。脇を固めるのは井浦新(49)や岡山天音(29)などの演技派で安心感が半端ない。 島田 私はやっぱり、日曜劇場の『アンチヒーロー』(TBS系)が一番好き。 桧山 長谷川博己(47)が演じる弁護士が殺人犯に向けて「あなたを無罪にして差し上げます」と言ってしまう。天使か悪魔か掴みどころのない役柄で、スイッチが入ったときにものすごく怖い。これぞプロの俳優だなって思いました。 島田 同僚の弁護士を演じる北村匠海(26)の、おとなしくて暗いんだけど前のめりな感じがいいアクセントになっている。あと堀田真由(26)が、ここ数年ですごく良くなっていますよね。 今井 彼女は何をやっても違う人に見える。『大奥』(NHK)での将軍役は迫力や貫禄がありつつ演技が繊細です。 島田 去年10月クールの『たとえあなたを忘れても』(テレ朝系)では、これもまた記憶喪失(笑)の男と恋に落ちる女性役。せつな系の役でもハマりましたね。今回はクールな弁護士役ですごいキリッとしていて、キャラが立っています。 今井 第1話の視聴率は1.9%と苦戦しているけど、私は『95』(テレビ東京系)もすごく好きです。 桧山 私もです。『95』はあの時代の空気をよく再現できている。 島田 タバコの自販機で生徒がタバコを買えるとか。 今井 ’95年に青春時代を過ごした人が観たら感慨深いですよね。お茶の間で会話してる時にずっと「麻原彰晃が逮捕されました」って速報が流れてたり。しかもリアルのニュース映像! 桧山 主演の高橋海人(25)は悪くないけど、まだちょっと、『だが、情熱はある』(日テレ系)の若林正恭役の冴えない感じが抜けてないような。 今井 彼にもう少し演技力があったら、このドラマはもっとバズっていたかもしれませんね。 島田 みんなが納得のいく脚本と俳優の実力、どちらが欠けても視聴者はついてこないってことですね。 『FRIDAY』2024年5月24日号より
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