映画『ノルマル17歳。― わたしたちはADHD ―』でADHDの女子高生役にオーディションで抜擢された新人・鈴木心緒&西川茉莉に注目「ありのままの自分を隠して生きている人たちに届いてほしい」
◆観終わった後、爽やかなあったかい気持ちになって、また明日頑張ろうって思えるような映画だと思っています
――本作で注目して見てほしいシーンを挙げるとしたらどこでしょう? 【鈴木心緒】「終盤の公園のシーンですね。朱里ちゃんが絃ちゃんに本心を吐露するんですが、そこまでは引っ張っていく立場だった朱里ちゃんと自分の想いを隠して来た絃ちゃんの立場が逆になるところが記憶に残っているので、そこはぜひ注目していただきたいなと思います。そのシーンはかなり長めに回して、本当にこの二人の流れで作り出した世界という感じでした。朱里は爆発的に感情を表現するタイプなんですが、そのシーンでは本当に辛くて心の底からどうしたらいいか分からないっていう気持ちが溢れて、それを絃ちゃんが支えてくれる、とても素敵なシーンになったと思います」 【西川茉莉】「見てほしいのは、友達のために何かできることないかなって、絃が初めて自分から動き出すシーンです。周りの人たちの温かい言葉を受けながら、朱里ちゃんのために何かを探そうとする心境の変化や、以前一緒に行った神社で朱里ちゃんのことを想うところは、私的に気持ちを込めて大事にしたシーンなので、注目していただきたいですね」 ――この作品の撮影に入るにあたって、ADHDについて学んだと思うのですが、その中で感じたこと、この作品に触れて変わった部分はありますか? 【鈴木心緒】「ADHDって目に見えるものじゃなくて、“普通の人”と同じに映るからこそ“普通ってなんだろう?”ということに悩み、心に傷を抱えてしまう人が多くいるんだということを改めて知りました。自分も“普通であるべき”とか“周りに合わせないといけない”という思いに捉われていたことがあるので、人と違うということをもっと大切に、尊重していけたらいいなって感じました」 ――“俳優を目指す”ということ自体、周りからはちょっと普通じゃないと見られることも多いですよね。 【鈴木心緒】「高校生の時から俳優に憧れていましたが、それを言うことによって周りからどんな目で見られるかわからないからずっと隠していたんです。でも、大学に入って仲良くしている友達に、実は芸能活動をしているんだよねっていう話をしたら、周りの子たちも知っていて、私が言わないから“隠したいのかなと思って言ってなかっただけで、本当は私たち応援してるよ”って言ってもらえたんです。そこからもっと自分に自信を持って、ありのままに生きていきたいなって思いました」 ――西川さんはいかがですか。 【西川茉莉】「先ほど身近に精神的な疾患を抱えている方がいると言ったんですが、私は小さい頃からその人の傍にいたので、色眼鏡を通さずにその人自身として見ていました。だからADHDだとしても、人自身を見て接するのが大事なんだと思います。ADHDと一言で括っても、朱里ちゃんみたいなタイプも絃ちゃんみたいなタイプもいるし、関わっているうちにその人自身の特性なんだと思って接していくことが大事かなって思いました。 あと、私は父が“しっかりした仕事に就きなさい。それが普通でしょ”というタイプだったんですが、それは“お父さんの普通”であって、世の中にはいろんな人がいて、いろんな価値観があると思うので、臨機応変に柔軟に、“普通”って言われることに立ち向かうというか、選ぶことが出来るようになればいいなと思うようになりました」 ――この映画をどんな方に観てほしいか、どんなことを感じてほしいかについてメッセージをいただけますか? 【鈴木心緒】「ADHDを取り扱った作品ですが、必ずしもADHDに関わる方々だけに向けた作品ではないと思うんです。私自身も普通が苦手で、人に合わせなきゃいけないことに悩んできたので、そんなふうに、ありのままの自分を隠して生きている人たちのためにもある映画なのかなと思います。そんな悩みを抱えている人にも届けばいいなと思っています」 【西川茉莉】「ADHDの当事者の方だけではなく、周りにいる人や、親の世代の方、ちょっと生きづらさについて悩みを持っている方など、本当にいろんな人に見ていただきたいと思います。観終わった後、爽やかなあったかい気持ちになって、また明日頑張ろうって思えるような映画だと思っています」 ――この作品が公開されたら俳優として注目されると思うんですが、今後の目標を教えていただけますか? 【鈴木心緒】「私は女優として活動していくのが目標です。ただヒロインとか主役とかを目指しているのではなくて、3番手、4番手、5番手、6番手とか、むしろ主役を支える側で、演技力で勝負をしていきたいと思っています。個性派な俳優になれるように頑張ります」 【西川茉莉】私も芝居が光る個性派女優になるというのが目標です。親からも“可愛さでは勝負していけないから、芝居でいきなさい”って言われるんですよ(笑)。私もそうだなって思います。今回の映画で選んでいただいたように、きっとハマる役があるはずですし、西川茉莉をキャスティングしてよかったなって関係者の方にも、作品を観ていただいた方にも思っていただけるような、唯一の女優さんになりたいです。大学に進学して、愛媛から上京してきたので、もっと幅広く挑戦したいと思っています」 ■北 宗羽介監督が語る俳優・鈴木心緒と西川茉莉 二人とも芝居勘が光っていました。街中のロケでは音の問題でアフレコ処理をしないといけなかったんですが、自分の芝居を忠実に再現できる俳優さんってなかなかいないんですよ。でもこれが2人ともほぼ完璧にできてたんですよね。そういう資質はオーディションの時に直感的に分かったので、今回抜擢しました。 心緒ちゃんの場合は、朱里役のすごく感情の起伏が激しい演技を自然にできていたところが特に良かったですね。いかにも芝居するぞという感じではない自然さで、実際に精神的な問題を持っている方が激高する感じを表現できていたのが素晴らしかったと思います。 茉莉ちゃんは、セリフよりも表情や目線など、本当に繊細な動きが要求される役だったんですが、そこを上手く捉えて表現してくれたかなと思います。セリフの言い方にしても、絃の意志が自然にセリフに込められていました。 二人とも自然な演技が映像向きの女優だなと感じましたし、今後映画やドラマで活躍して行くのが楽しみです。 ■プロフィール ●鈴木心緒(すずき・こころ) 2004年3月19日生まれ、神奈川県出身 フジテレビ『オールナイトフジコ』にフジコーズのメンバーとして出演中 ●西川茉莉(にしかわ・まり) 2005年6月7日生まれ、愛媛県松山市出身 短編映画『父の声』(2022)主演 ■映画 『ノルマル17歳。 ― わたしたちはADHD ―』 【あらすじ】 進学校に通う絃(いと/西川茉莉)はまじめな子であったが、発達障害のひとつであるADHDと診断されており、ひどい物忘れで生活や学業に支障を来していた。 重要なテストの日、絃は目覚まし時計をかけ忘れて寝坊してしまう。 ショックのあまり絃は登校せず、いつもは行かない道をさまよって見知らぬ公園に来てしまう。 そこで突然、茶髪で派手なメイクのギャル女子高生・朱里(じゅり/鈴木心緒)に声をかけられる。 「何してんの?」「あ…今日は寝坊して」 「あたしなんかほとんど寝坊か欠席。学校行ったけど落ち着かなくて帰ってきた。あたし発達障害あってさ。ADHDっての。知ってる?」 いきなりADHDだと言う朱里に驚く絃。 朱里は強引に絃を街へと遊びに誘う。 古い商店街や裏山が見渡せる公園、野良猫たち。 普段は家と学校の往復しかしない絃にとって、それは新鮮な世界であった。 朱里と絃は友達となり、後日も遊びに行くが、絃の母(眞鍋かをり)に見つかってしまう。 絃の母は朱里の派手な身なりに不快感を持ち、朱里との交際を禁止してしまう。 一方で朱里は、自分の物忘れで姉(花岡昊芽)との喧嘩が絶えず、父(福澤朗)や母(今西ひろこ)からも厳しく言われて家庭内で孤立していた。 やがて朱里は絃とのメッセージのやり取りもやめ、次第に部屋に引きこもっていく。 朱里と絃との距離は次第に離れ、再び元の日常に戻りつつあったが… 【出演】鈴木心緒、西川茉莉、眞鍋かをり、福澤 朗、村野武範 、小池首領、今西ひろこ、花岡昊芽 ほか 【スタッフ】 監督:北 宗羽介脚本:神田 凜、北 宗羽介 音楽:西田衣見撮影:ヤギシタヨシカツ(J.S.C.) エグゼクティブ・プロデューサー:下原寛史(トラストクリエイティブプロモーション プロデューサー:北 宗羽介、近貞 博、斎藤直人 製作:八艶、トラストフィールディング 配給:アルケミーブラザース、八艶 後援:日本発達障害ネットワーク(JDDnet)、NPO法人えじそんくらぶ 他 文化庁「ARTS for the future!2」補助対象事業 (C)2023 八艶・トラストフィールディング /80分/カラー/5.1ch