「自由恋愛」の世で忘れていましたが、結婚は割と長い間「家の都合」でなされていた。いわんや平安貴族をや【NHK大河『光る君へ』#12】
漢詩が読める女も、かぶを洗う女も、「貴族の姫」に生まれてしまったら「ヘンなやつ」だった
当時、貴族の女性が炊事や掃除をすることはありませんでした。床を拭いたり、大根を洗ったりするまひろの姿は他の貴族にとって奇異に映ります。 本放送では、為時(岸谷五朗)が気に掛ける女性の娘・さわ(野村麻純)が初登場しましたが、彼女も父から「女は何もするな」と言われて育ちました。しかし、さわはまひろの家事を手伝うことに。 貴族社会が規範とする女性像からあえて逸れることで得られる発見やよろこびがあります。特に、まひろやさわのように物事に偏見や固定観念を抱かず、ポジティブに行動することでしか気付けないものもあります。 家事をする二人の姿は御簾の奥に隠れている女性たちよりも、生を謳歌しているともいえるでしょう。カブを持つさわの笑顔には姫君たちのどこか取り繕ったような笑顔とは違うものを感じとれます。“平安時代における貴族の理想的な女性像”から一歩外れることで、見えてくるものもあるのかも。 前編記事では本編ストーリーに基づく当時の状況解説をお送りしました。つづく後編記事では、平安時代の慣習の中でも「婚姻」について、現代からすれば驚愕のシステムである「公認シタ夫」を解説します。
ライター・アメリカ文学研究者 西田梨沙