<夏に咲く・2020甲子園交流試合>/上 待ち望んだ「再戦」 星稜、履正社相手に成長なるか /石川
阪神甲子園球場(兵庫県西宮市)で行われている「2020年甲子園高校野球交流試合」に、今春のセンバツに出場予定だった星稜と日本航空石川が登場する。星稜は15日午前10時から履正社(大阪)、日本航空石川は16日午後3時20分から鶴岡東(山形)とそれぞれ対戦。夢の舞台での一戦に臨む選手の姿を紹介する。【井手千夏】 【真夏の熱闘】交流試合の写真特集はこちら 春のセンバツでは県勢初の4強入りを、夏の甲子園では昨年の借りを返す優勝を――。星稜ナインは先輩たちが重ねてきた功績を超えるためにひたすら練習に取り組んできた。新型コロナウイルスの影響で1試合限りとなる今夏の聖地は、見慣れたものとは違うが「(昨夏の決勝で敗れた)履正社に勝ちたい思いは強い」(内山壮真主将=3年)。何よりも選手たち自身が待ち望んでいた「再戦」はまもなくだ。 夏の甲子園の中止が決まった5月、主戦の荻原吟哉投手(3年)は学校で出会った林和成監督の前で人目をはばからず涙を流した。「監督を日本一にするのが目標だった。それができないのかと思うと悔しかった」。昨秋の県大会、北信越大会を圧倒的な実力で制覇し、センバツでは躍進が期待されていた。春を失ってもまだ夏がある、と奮い立たせていた気持ちのやり場を見つけるのは簡単ではなかった。 林監督は「荻原ら準優勝メンバーは、昨年の3年生との素晴らしい夏に戻りたいという、悔しさが強かったのだろう」と話す。それでも6月8日から全体練習が再開され、10日には交流試合開催も決定。チームは徐々にリズムを取り戻していく。荻原投手は「日本一のチームである履正社を倒すことに意味がある」と大舞台での闘いを待ち望む。 一方、雌伏の時期を超えて、1試合にかける選手もいる。荻原投手と二本柱をなす寺西成騎投手(同)は昨秋の北信越大会後から右肩の痛みで投球ができなくなり、11月の明治神宮大会初戦の明徳義塾(高知)戦では登板できないまま、チームも敗退。センバツ中止で、4月に手術を受けることを決断した。「大学、プロ、先の目標がある」「春は寺西以外で勝つから夏に間に合わせろ」という林監督の言葉が背中を押した。 休校期間中は自宅近くで往復5キロのランニングなどを続け、下半身強化を進めてきた。夏の甲子園中止で一度は心が折れかけたが、交流試合の決定で気持ちを持ち直した。「試合までに調整をして万全で投げられるようにしたい」(寺西投手)と登板機会を待つ。 県独自大会では9日の決勝で日本航空石川に敗れ、チームとして県内公式戦での連勝が39でストップした。常勝チームが受けた衝撃は小さくはないが、「この負けがあったから履正社に勝ったと思えるような時間を過ごさなければならない」(林監督)。試練を経て、さらに成長した姿を、好敵手相手に見せられるか。見どころの詰まった試合になりそうだ。