《ブラジル》折り紙を職業にする日系3世=岡部マルシオさんの挑戦
今年8月、サンパウロ市リベルダーデ区のブラジル日本文化福祉協会ビル6階、本紙編集部と同じフロアに、折り紙アトリエ兼教室「Origami.club」がオープンした。日本の伝統文化である折り紙は、幼い頃に誰もが一度は触れたことのある身近な遊びの一つだが、職業としている人は少ない。岡部マルシオさんはそんな折り紙の世界を独自に切り開き、「Origami.club」を開いた。
マルシオさんはバイーア州サルバドール出身の日系3世で、現在56歳。幼少期は父親の仕事で2年間をイラクで過ごし、大学では工学を専攻した。折り紙との出会いは6歳の頃で、母親からよく教わっていたという。社会人になり、マーケティング分野で20年間仕事をしたが、49歳の時、ある本の「自分が生涯無料でやりたいことを見つけて、それを仕事にする」という言葉に感銘を受け、折り紙に情熱を傾けることを決意。ブラジルのアート作家たちが想像力と技術を競うテレビ番組「Batalha Makers Brasil」などにも出演した。 マルシオさんは、折り紙を単なる遊び道具ではなく、コミュニケーションツールとしてとらえ、世界中の人々が共通して楽しめる普遍的な言語として、折り紙で人々の心をつなぐことを目指している。 他の分野のアーティスト同様に作品の販売も行う傍ら、講演会やワークショップも実施し、参加者一人一人が折り紙を通して自己表現できる場を提供している。講演料やワークショップの開催料がマルシオさんの主な収入源となっている。 マルシオさんは、折り紙が持つ力について、「人工知能がどれだけ発達しても、きっと人と人の繋がりに変わることはできません。日本の熟語で一期一会と言うように、折り紙を通して誰かと同じ時間を分かち合うことは唯一無二の瞬間です。子供たちは特に、そのかけがえのない一時を一生忘れることはないでしょう、母と折り紙をしていた幼少期の私のように。なので、人は誰しも一度でいいから折り紙を体験してみるべきだと思います」と語る。 アトリエ兼教室では、親子や高齢者など、様々な人が集まり、共に折り紙を楽しんでいる。新規利用者も大歓迎。問い合わせ先は携帯電話(11・94553・2547)まで。活動の様子は公式ホームページ(https://origami.club/)から確認できる。 ブラジル日報のYouTubeチャンネル(https://www.youtube.com/@BrasilNippou)ではマルシオさんのインタビュー動画が見られる。