発達障害の人でも「スーパー総務」と重用 「新・ダイバーシティ経営企業100選」企業の社長が語る採用方針
ところが障害者であれば、制度の利用によって自社との的確なマッチングを果たせるのだ。しかも助成金までもらえる。川田製作所では、トライアル期間中に個人の生産目標を設定。クリアすれば継続雇用するという形を取っている。これまでに3人の実習を受け入れ、うち1人を採用した。 働く障害者側にとっても、職場の雰囲気や業務の中身を事前に知れる利点がある。ミスマッチを防げるため定着もしやすい。 「たとえ健常者を雇っても、すぐに辞められたら採用や教育にかけたコストが無駄になる。トライアルを経た障害者のほうが、そうした人的投資を回収しやすいと思う」(川田社長)
■負担だけでなくトータルで考える さらにハローワークなどを経由して障害者を雇うと、「特定求職者雇用開発助成金」という補助を得られる。中小企業の場合、重度の身体・知的障害者や精神障害者などを継続雇用すれば、3年で計240万円が支給される。初期の人件費を抑えながら、障害者を戦力化する道筋を立てられる、というわけだ。 障害者雇用の取り組みなどが評価され、川田製作所は2018年に経済産業省の「新・ダイバーシティ経営企業100選」に選出。2022年には厚生労働省による「障害者雇用に関する優良な中小事業主に対する認定制度(もにす認定制度)」にも選ばれた。
地元でも、2012年に神奈川県から「かながわ障害者雇用優良企業」と認定された。こうした評判から近年、川田社長の元には講演会などの依頼も相次いでいる。佐々木さんは「障害者雇用に熱心と知ったから」と応募の動機を語り、採用面でも有利に働いている。 人手不足にあえぐ企業は多い。とくに小規模な事業者の中には、後継者不在で廃業を迫られるケースも増えている。そんな状況を踏まえたうえで、川田社長はこう力を込める。
「障害者を受け入れると、最初は現場に負担感も生じると思う。ただ、トータルで考えればメリットのほうが大きく、法的な義務がない小さな会社でも、選択肢から外すのはもったいない。人手が欲しいのであれば、まずはトライアルを受け入れてみるのはいかがでしょうか」
石川 陽一 :東洋経済 記者