年俸35億円でも不況と呼ばれるメジャーFA戦線。理由は日本人投手の動向?
NPB各チームの契約更改も、ほぼ終了。現段階で最高額で契約更改を果たしたのは、2014年オフに4年20億円の複数年契約を結んでいたオリックス・金子千尋(33)の現状維持の5億円。アップ額が最も大きかったのは、2億円アップを勝ち取って3億円で契約更改を行った横浜DeNAの2冠、筒香嘉智(25)だった。だが、メジャーに目を向けると、やはりゼロがひとつ違っている。 メジャーでは主力選手のほとんどが複数年契約を結んでいるため、契約更改イコールFA移籍、もしくはFA残留交渉での金額となるが、現時点で最高額を勝ち取ったのは、メッツからFAとなっていたヨエニス・セスペデス外野手(31)。再びメッツと契約し、4年契約で総額1億1000万ドル(約128億8500万円)、1年の年俸換算では、2750万ドル(約32億2100万円)。今シーズンの成績は、132試合に出場し、打率.280、31本塁打、86打点だった。金子の約6倍の金額だが、これでもオフのメジャーFA市場は、買い手市場で、選手側からすれば、大不況で冷え込んだものだったのだ。 昨オフのFA選手の最高契約額は、左腕の先発デービッド・プライスが、レッドソックスと7年で総額2億1700万ドル(当時のレートで約276億円)で契約したもの。年俸にすれば、1年3000万ドル(約35億円)。2位は、同じく先発のザック・グリンキーが、ダイヤモンドバックスと6年で総額2億650万ドル(当時のレートで約254億円)で契約したもので、平均年俸は3442万ドル(当時のレートで約41億円)にもなり、この年俸平均額は、メジャー史上最高額だった。 まだ今季47本塁打でア・リーグのタイトルを取ったオリオールズからFAのマーク・トランボや、ブルージェイズからFAのホゼ・バティスタ、インディアンズからFAの今季34本、101打点マイク・ナポリら大物FA選手の移籍先は決まっていないが、今オフは、FA選手獲得に動いたお金が少ないのである。。 なぜ、このようなFA不況が訪れたのか? 昨オフのFAの高額契約の1位と2位はいずれも先発投手だったが、今オフはFAとなったエース級の先発投手がほとんどいないこともFA市場の不況につながった。今回、最も高額な契約をした先発は、今季12勝5敗、防御率2.12の成績を残したマエケンの同僚、リッチ・ヒル投手(36)。ドジャースと3年契約、4800万ドル(約56億2258万円)で残留したが、1年の年俸に直すと1600万ドル(約18億7419万円)だった。 冷え込んだFA市場の原因をESPNの電子版が分析していたが、理由のひとつとして、来年オフに予想されるFA市場が挙げられていた。 「来年オフには、大物選手のFAが多いため、今オフに無駄遣いせず、これらの選手の獲得費用に残しておきたいからだ」。ESPNが、挙げたのはナショナルズのブライス・ハーパー、オリオールズのマニー・マチャド、ブルージェイズのジョシュ・ドナルドソン、ツインズのブライアン・ドジャーらだが、25歳ルールがあるにしても、日ハムの大谷翔平のポスティングによるメジャー移籍の動向も、少なからず影響を与えているのだろう。実際、上原浩治を獲得したカブスが、大谷の獲得に備えて、動きを抑えているとの報道もあった。 来年FAとなるレンジャーズのダルビッシュ有も、100億円を超える大型契約が予想され、複数年契約の途中破棄の権利を持つヤンキースの田中将大も、行使すれば大きな金額の交渉になることは間違いない。今オフのメジャーFA不況を呼んだ一因には、日本人投手の動向も絡んでいるのである。