【2024年の景気予報】ますます加速する少子高齢化、中国の深刻な景気後退…日本経済の今年の展望は?〈経済評論家が解説〉
中国経済は不振だが、日本への影響はそれほど心配ない
中国に関しては、不動産バブル崩壊、政府による共同富裕政策、米中対立などにより、相当深刻な景気後退が予想されます。日本の輸出にはマイナスですが、トータルで考えれば日本への影響はそれほど大きくないと筆者は考えています。 不動産バブルが崩壊しているようで、不動産建設がストップしてしまうことなどによって景気が悪化しているわけですが、金融危機は政府が防いでいるようですし、仮に中国で金融危機が発生しても人民元の世界の話ですから、基軸通貨である米ドルの国で金融危機が発生したリーマン・ショックのときとはまったく影響が異なるはずです。 最近の中国共産党は、「共同富裕」というスローガンを掲げており、経済の発展よりも共産党政権の安定を重視している模様ですので、経済活動に様々な統制や制約が課せられることも増えていて、経済活力が失われつつあるようです。 米中対立は、「中国に投資するリスク」を先進国企業に意識させるようになっており、投資先を中国以外の国に変更する企業も増えている模様です。 以上を総合的に考えると、中国経済は、年内はもちろんのこと、数年間にわたって深刻な不況が続くかもしれません。もっとも、日本への影響に関しては過度な懸念は不要です。 まず、中国は世界最大の資源輸入国なので、中国経済の不振は世界的な資源価格を引き下げる力として働きます。ガソリン価格等が下がれば人々が飲みに行く回数等が増えて景気に貢献するはずです。 加えて、現在は米国がインフレ抑制のために金融を引き締めていますが、その必要性が薄れれば、米国の経済にはプラスに働くでしょう。 中国に投資していた企業がインド等に投資するようになればインド等の経済が成長して日本のインド等向け輸出が増えるかもしれませんし、日本に投資する企業もあるでしょうから、直接日本の設備投資が増加して景気を良くする効果も期待できるでしょう。
少子高齢化で景気の波は小さくなる
景気に関して重要なことは、少子高齢化で景気の波が小さくなる、ということです。せっかく景気に関心を持って拙稿を読んでくださっている読者を失望させてしまうかもしれませんし、なにより景気予想屋である私の仕事を奪ってしまう悲しい話をしましょう。 第一に、高齢者の消費が安定していることが原因です。高齢者は年金が安定的に入りますし、老後資金の取り崩しも安定的に行ないます。ということは、高齢者向けの仕事をしている人の所得も安定しており、彼らの消費も安定しているわけです。 極端な話、若者が全員で高齢者の介護をしている経済では、景気の波はほとんどないはずです。そこまで行かなくても、それに近づいていくだけで、景気の波は小さくなっていくのです。 もうひとつ、少子高齢化で労働力不足になることも原因です。景気が良いときは超労働力不足、景気が悪くても少し労働力不足、という時代になれば、失業が発生しないので、不況が深刻化しにくいでしょう。 一方で好況にも限度があります。人々が消費を増やしたり減らしたりしようと考えても、人手不足の飲食店の前に並ぶ客の数が増えたり減ったりするだけで、実際の消費額はそれほど変動しないからです。 今回は、以上です。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密ではない場合があります。ご了承いただければ幸いです。 筆者への取材、講演、原稿等のご相談は「ゴールドオンライン事務局」までお願いします。「ゴールドオンライン」トップページの下にある「お問い合わせ」からご連絡ください。 塚崎 公義 経済評論家
塚崎 公義