DAOは従来型組織と何が違う? Web3.0時代の“分散型自律組織”とは【SENSORS】
■「デジタル村民」地域の新しい関係性
人口800人の限界集落がDAOを立ち上げたことで話題を呼んだ新潟県長岡市の「山古志住民会議」代表の竹内春華さんは、DAOのダイナミズムと多様性を実感している。
「従来の地域おこしは、主役である住民が自分たちの地域をどう良くするかを話すのが一般的で、地域外の人は『応援団』のようなサブ的な役割でした。それが、DAOに置き換わると、住民以外のデジタル村民が世界のどこからでもオンライン上で意思決定に加わったり、山古志に貢献したりできるようになりました。地域に住んでいる村民はもちろん、東京、東南アジア、アメリカなどで暮らしている方々が『山古志を元気にする』主役の立ち位置として参加してくださっています」 デジタル村民が地域に参加したことで、山古志の名産品である大根とナスをアバター化して仮想空間にある“山古志村”で交流したりと、人口800人の小さな村からは出てこなかった発想や活動が生まれているという。 山古志では、デジタルとリアルを融合したハイブリッドな取り組みも盛んに行われている。日頃はオンライン上でやりとりするが、イベントなどの折にはデジタル村民が現地へ足を運び、親交を深めている。 「先日は、山菜の直売所をしているおじいちゃん、おばあちゃんたちが開催した『直売所まつり』に、デジタル村民の方々が来て応援してくれました。来られなかった方々も生配信を手助けしてくれるなど、リアルとデジタルが掛け合わさったプロジェクトが動いています」
■テクノロジーが「善意の継続」をあと押し
Tokyo Otaku Mode共同創業者兼COOのpajiさんは、柔軟な組織設計が可能なDAOの状況を「ネットコミュニティのバージョンアップ」と表現する。
「プロジェクトを実施する以上、活動資金が必要になります。ただ、これまでのネットコミュニティーだと、どうしてもボランティアベースになってしまうことが多く、継続性がなかったんです。一方、DAOなら『トレジャリーウォレット』と呼ばれる組織共有の財布を使うことで、透明性を担保しながらお金を管理できます。誰がどの投票に参加し、どのようにお金が使われ、どのような効果が出たか、全て明らかになるので、従来型組織で問題になりがちな『密室で勝手にお金が使われる』という事態は起こりにくいんです。このような組織の枢軸となる部分がブロックチェーンで安全に運営できるところが、従来型組織とDAOとの大きな違いではないでしょうか」 コミュニティに貢献したいという「善意」が継続しやすくなることに塩崎議員も同意する。
「継続性は、とても大事なキーワードです。多くの方が善意を持っていらっしゃいますが、ボランティア精神に甘えるばかりでは1つのプロジェクトに熱量を向け続けてもらうことが難しいわけです。継続するためのインセンティブの提供や信頼性を担保できる透明性の確保ができるDAOを活用すれば、善意の継続が実現できるかもしれませんね」