オーバーツーリズムの「富士山」は登るより眺める方がいい、絶景富士の眺望を楽しむお手軽山歩きスポット・ベスト5
【高尾山(標高599m/東京都)】 ミシュランの三ツ星に選ばれたことで人気に火がついた高尾山。都心からのアクセスが良く、新宿から1時間ほどで登山口に着く。 富士山を眺めたければ朝早いスタートがおすすめだ。遅くとも8時ぐらいには登山口を出発したい。1号路から途中で4号路に入り、吊り橋を渡ってブナの木々を眺めながら山頂をめざすコースがお気に入りだ。 9時30分ごろには山頂に着く。空はまだ澄んでいるから天気が良ければ富士山の眺望を思う存分堪能できるはずだ。人混みが嫌ならば、奥高尾の道を進み小仏城山や景信山(かげのぶやま)に足を延ばすのもいい。途中、休憩しながら富士山を眺め、コーヒータイムにするのもいいだろう。 【扇山(標高1138m/山梨県)】 中央道の談合坂サービスエリアから正面に見える文字通り扇形の山容をした山で、中央本線沿いでは屈指の人気を誇る山である。 スタートは中央本線・鳥沢駅からタクシーで10分ほどの梨ノ木平。ゴルフ場の真ん前である。山梨百名山に加え、大月市の富嶽十二景にも選ばれている。それだけ富士山を見るのにふさわしい山ということだ。季節的には秋から冬がいい。凛とした大気の中で雪をかぶった富士山の姿を楽しむことができる。 登り口から山頂まではゆっくり登っても1時間30分ほど。途中に水場がある。休憩がてら喉を潤したい。水場を過ぎると小さな祠(ほこら)があるので道中の無事を祈願しよう。この辺りからつづら折りの登りが続く。のんびりとマイペースで進みたい。 やがて大久保のコルという分岐点に到着。ここを右手に進むと10分ほどで山頂だ。広い山頂は時間が経つにつれ多くのハイカーで賑わう。だから早めに出かけて空気の澄んだうちに富士山の秀麗な姿を堪能し、絶景を背景においしい山頂ランチを楽しもう。
【入笠山(標高1955m/長野県)】 標高が2000m近いが、麓からゴンドラを利用できるので総歩行時間は2時間半から3時間ほど。初心者にもピッタリのトレッキングコースだ。 麓からゴンドラに乗ると一気に標高1780mの山頂駅まで運んでくれる。ここから10分も歩けば花の宝庫・入笠湿原だ。6月ごろに咲くスズランの大群生が有名だが、春から秋にかけコナシ、クリンソウ、レンゲツツジ、クルマユリ、ハクサンフウロ、ヤナギランなど100種類以上の山野草が展開するお花畑となる。花好きにはたまらないスポットだ。 お花畑からは1時間ほど歩けば山頂だ。とりたてて険しい所もなく、マイペースで進みたい。山頂からの眺望はすばらしい。八ヶ岳、富士山から南アルプス、中央アルプス、そして遠くは北アルプスまで深田久弥の『日本百名山』のうち22座を確認できるという。空気が澄んでいる午前中の時間帯に訪れたい。 麓の富士見町は堀辰雄の名作『風立ちぬ』の舞台となった八ヶ岳山麓の「Fサナトリウム」があった場所。昭和の時代に多くの著名人が療養に訪れたサナトリウムは、現在「旧富士見高原療養所資料館」となっている。山からの帰り道に立ち寄ってみるのもいいかもしれない。 【霧ヶ峰(標高1925m=車山/長野県)】 夏になるとニッコウキスゲの黄色い花が咲き誇る大草原が広がる霧ヶ峰には、登山というよりもトレッキング、ハイキングという言葉がしっくりくる。深田久弥は「山には登る山と遊ぶ山がある」としたうえで、霧ヶ峰は遊ぶ山の典型として、こう述している。 〈気持ちのいい場所があれば寝ころんで雲を眺め、わざと脇道へ入って迷ったりもする。当然それは豊かな地の起伏と広濶な展望を持った高原上の山であらねばならない。霧が峰はその代表的なものの一つである〉 10月27日まで中央本線の上諏訪駅からアルピコ交通がバスを運行中。朝9時35分のバスに乗れば10時29分に「霧ヶ峰インターチェンジ」に着く。ここから車山肩に向けて高原の道をのんびりと歩きたい。やがて緑の丘陵のかなたに南アルプスの稜線が見えてくる。そして、その先には秀麗な富士山が姿をあらわしてくれる。 車山肩に着いたら山荘「ころぼっくるひゅって」に立ち寄りたい。サイフォンで出してくれるコーヒーを味わいながら、大草原と周囲の山々の景色を思う存分堪能しよう。