「チーズ工房」10年間で倍増、340超に 〝豊富な種類〟ニーズつかむ
チーズ工房の数が年々増えている。農水省によると国内工房数は2022年度で346カ所に上り、10年間で1・9倍となった。フレッシュタイプや白カビタイプなど多様な種類の国産チーズを楽しみたいという消費動向に応える。近年では、チーズの食べ方などを消費者に直接提案できる飲食施設を備える動きもある。 【グラフで見る】チーズの工房数や消費量は増加傾向 工房数は12年度は186カ所、17年度は306カ所と年々伸びている。日本チーズ協会によると、これまで工房が多かった北海道以外でも設立が活発化し、「すでに全都道府県に工房がある」という。 作り手や地域の個性が出やすいチーズ工房では、スーパーなどでは入手しにくい青カビやウォッシュ、ヤギの乳を使用したシェーブルなどさまざまなタイプのチーズが提供される。同省は、食の洋風化で「チーズの消費機会が増えると同時に、多様なチーズを楽しみたい消費者が増えていることが工房の増加につながっている」(牛乳乳製品課)と指摘する。22年度のナチュラルチーズの消費量は約20・5万トンで、12年度と比べ18%増えている。 滋賀県東近江市の古株つや子さん(40)は、22年末にチーズ工房「Lactoserum(ラクトセロム)」を立ち上げた。工房にはカフェ兼バー「Y-s(ワイス)」を併設し、チーズを使った洋菓子や、バーで提供するお酒に合うチーズも提案。古株さんは「消費者の声をじかに聞くことで、自分が作りたいチーズだけでなく、要望に合わせたチーズ作りにもつながっている」と話す。来店者からは、口当たりが良く、生乳の風味が感じられる比較的癖のないチーズが人気を集める。こうした要望に応え、フレッシュ、白カビ、ウォッシュなど多様なナチュラルチーズを提供する。
「新潟にもおいしいチーズ」広めたい
印章製造大手の大谷(新潟市)は、今夏からチーズの製造・販売を本格化させる予定だ。子会社の社会福祉法人が、障害者の雇用創出へパンやチーズの製造・販売に20年に着手。チーズは小規模設備で不定期に製造していたが、大谷が設備を増強し製造に乗り出す。 同社は「新潟県にもおいしいチーズがあることを広めたい」と、県内では珍しいカマンベールなどの熟成系チーズを主に製造する考え。同社のパン販売店に加え、道の駅や空港でも販売する予定だ。 同協会は年内に、工房の衛生面やチーズの食味などを審査し、基準を満たした場合に認証マークを付与する制度を始める。チーズ製造者の意欲や技術の向上につなげると同時に、衛生面などの客観的な評価で消費者の安心感を醸成し、需要拡大を後押しする。(森市優)
日本農業新聞