神田正輝がラーメン好きの異色刑事役に挑んだ、「ラーメン刑事「龍」の殺人推理」
"ラーメン刑事"の異名を持つ変わり種の刑事が、赴任先で起こる難事件を解決に導く「ラーメン刑事「龍」の殺人推理」。事件の鍵を当地の名物ラーメンが握るという一風変わった設定だが、2000年から2005年の土曜ワイド劇場で放送された全5話はいずれも視聴率10%以上を獲得。根強い人気を獲得したサスペンスシリーズだ。 【写真を見る】ラーメンを食べる龍鉄平(神田正輝)と桃木モモ(大桃美代子) 主人公の龍鉄平は、事件を次々に解決する優秀な刑事。その半面、チームワークに欠ける面があり、県警本部から地方へと飛ばされることもしばしば。ところが、幸か不幸か出向が全国各地で評判のラーメン店を食べ歩くきっかけとなり、ついにはラーメン本を執筆してしまったという刑事としては異色の経歴の持ち主だ。 シリーズ第1弾の舞台は、喜多方ラーメンで知られる福島県喜多方。物語は、出向を命じられた龍が喜多方へと向かう列車からスタートする。喜多方駅に到着した龍を出迎えたのが、本作で龍の相棒となる喜多方警察署の婦警・桃木モモ(大桃美代子)だ。 ヤマンバギャル姿に変装し、コソ泥の張り込み中だったというモモに刑事のイロハを説いた龍は、まず警察署ではなく喜多方一押しのラーメン店を向かうように命じる。そして、モモに案内された「喜楽」でラーメンを頬張っている時に、銀行員の田島信一が殺される事件が発生。捜査を進めていく中で、着任早々に立ち寄った「喜楽」で働く木村早苗(安永亜衣)が捜査線上に浮上するというのが物語のあらすじだ。 龍を演じるのは、昭和の名優に数えられる神田正輝。これまで「太陽にほえろ!」の西條昭役をはじめ、数々の刑事役を務めてきた神田にとっても、おそらくラーメン好きという設定は初めてで、チャレンジングな役柄だったはず。そんな中でも、ラーメンをものの数秒で完食するなど、随所にラーメン愛を感じさせる演技はさすが。 また、ユーモアに溢れたシーンが散りばめられ、えてしてネタドラマ化しかねない本作を本格刑事作に昇華させているのも神田だ。例えば、捜査手法を巡って係長の宮田五郎(ガッツ石松)と対立したり、クライマックスで犯人と対峙するシーンでは、迫真の演技で物語に緊張感を持たせている。 シーンに合わせて緩めるところは緩め、締めるところは締める演技で、作品に幅を持たせているのもベテランのなせる技だろう。 本作には龍がラーメンにこだわる理由が描かれるなど、シリーズを楽しむ上で重要なファクターも詰め込まれている。神田が見せるウィットに富んだ演技にも注目しながら、本作を楽しんでほしい。 文=安藤康之
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