ヤマザキマリさん絶賛の花見温泉【庄川温泉 風流味道座敷 ゆめつづり】夢見心地に浸る富山の宿
日本全国に温泉宿は1万軒以上もありますが、湯船から花見を楽しめる宿はほんのわずかしかありません。そこで“温泉賢者”の方々に、季節限定のとっておきの温泉宿を伺いました。春になると一斉に開花し、あっという間に散りゆく桜。日本人が愛してやまないこの花を思う存分に堪能し、心身をどうぞ豊かに満たしてください。
庄川温泉 風流味道座敷 ゆめつづり|ヤマザキマリさん(漫画家・文筆家・画家)おすすめ
視線の先に枝を広げた桜。あまりにきれいで夢見心地になりました───ヤマザキマリさん 飛驒の高地を水源に富山湾へと流れる庄川。高い透明度を誇る庄川の川沿いは良質な温泉が湧く温泉郷として古くから親しまれてきました。温泉郷には、ソメイヨシノと桜に先駆けて咲くれんぎょうが植樹され、自生のエドヒガンやヤマザクラとも相まって春はとりどりの色でにぎわいを見せます。 川沿いに建つ「ゆめつづり」も桜の薄紅色で彩られ、「露天風呂は頭の上まで桜の枝が張り出していて、見惚れてしまいました」とヤマザキマリさんも魅了された美しさ。 <写真>大浴場「ゆめの湯」の露天風呂。同じように花見ができる大浴場と男女入れ替え制。
<写真>窓際のテーブル式掘りごたつから外を眺めれば、ちょうど枝先の桜が見える3階の客室「つつじ」。10畳の和室に、檜の内風呂付き。
現在、花見露天の名所として全国的に知られる風呂は、1950年に「庄川温泉」の宿名で創立した小西順三さんが手掛けたもので、花見風呂の先駆けといわれているそうです。 露天風呂は岩風呂のほか、甕の陶風呂、寝湯も備え、さまざまな角度から桜を愛で湯浴みすることができます。 <写真>客室「しおん 」の風呂は、眼下に桜。
夕食には富山湾の幸が登場。とろりとした舌ざわりと上品な甘さの白えびは「富山湾の宝石」と称される美味。ほたるいかのボイルは酢味噌で。「天然のいけす」と呼ばれている富山湾近くの市場から、料理人の経験がある現社長・小西淳一さんが新鮮な魚介を仕入れ、趣向を凝らした献立へ。 春なら白海老、ほたるいかは欠かせません。「富山湾では3月からホタルイカ漁、4月からシロエビ漁が解禁になります。どちらも鮮度が要。桜とともに、この味を求めてみえる常連さんもいらっしゃいます」と小西さん。 器はときに庄川畔の木を挽いた伝統工芸品「庄川挽物木地」のものが登場します。また、人気の貸し切り家族風呂にも対岸の山で採掘されていた「金屋石」を使用。桜や湯だけでなく、すべてに庄川の恵みが詰まっています。 【庄川温泉 風流味道座敷 ゆめつづり】 富山県砺波市庄川町金屋3531 一泊2食付き2名1室の1名料金20,900円~(サ込・入湯税別) IN15時 OUT11時 全30室 桜情報…温泉郷の見ごろは毎年4月10日前後だが、宿の露天風呂の桜は温泉の熱で多少早め。近くの庄川水記念公園では開花時期に合わせて「庄川峡桜まつり」が開催され、ライブやお茶席などが楽しめる。 撮影=館野二朗 取材・文=須田秀子(婦人画報編集部) 『婦人画報』2024年4月号