ますます凶暴化するクマ対策は待ったなし!人間が駆除、放置したシカを餌に“肉食化”するクマも出現
■ 恐ろしい“ハイブリッド熊”の出没情報、民家立てこもりも 危惧されるのは個体数の増加や分布域の拡大だけではない。 秋田県で人を襲撃したクマについて「過去に観光牧場から逃げ出したヒグマと在来のツキノワグマの間で生まれた交雑種で、“ハイブリッド熊”ではないか」との情報が一部メディアで流れていることだ。 これが事実なら恐ろしいことになる。ツキノワグマよりもはるかに大きなヒグマタイプが本州で増えるようなことになったらどうなるか。想像を絶する不気味さがある。 クマによる人身被害も増加中だ。令和5年度は198件(219人、死亡6人)で、統計のある平成18年度以降で過去最多。9月以降に顕著に増加し、10月の発生件数は過去最多だった。令和6年度は4月、5月の2カ月間で13件(15人)となっている。 北海道や秋田県などでは市街地まで出没するケースが頻繁にみられるようになっている。福井市では6月18日午前、クマが住宅街の家の中に立てこもるという事態が生じ、夕方になって駆除された。このままでは人への被害拡大は避けられない。
■ クマ1頭当たりの捕獲単価「8000円」は妥当なのか これ以上の被害を避けるためにもクマ対策は「もはや待ったなし」の状況だ。 いち早く動いたのが北海道である。道はヒグマ保護政策に重点を置き、春グマ駆除を30年ほど前からやめていたが、個体数の増加に伴う市街地などへの出没抑制を目的とする「春期管理捕獲」を令和5年から始めた。冬眠中や冬眠明けの個体が対象で、昨年は19市町村・団体が許可を得て、うち6市町村が20頭を駆除した。 今年は2─5月にかけて昨年の2倍以上となる45市町村で実施された。参加者は1808人で、昨年の約2.2倍。初心者のハンターも多く含まれていたという。今年から市町村が負担する経費の半分を道が補助することにしたが、クマへの危機感と補助制度が自治体の参加意欲を高めたようだ。 今年の捕獲頭数は14頭で昨年よりも6頭少なかった。自治体関係者からは「ハンター育成の場として有意義」などの声が上がっているというが、出没抑制対策の効果としては疑問が残る結果ではないだろうか。 国も重い腰をようやく上げ始めている。今年2月16日、環境省は省令を改正し、絶滅の恐れのある四国の個体群を除いたクマ類を指定管理鳥獣に指定した。これにより市町村がクマ対策を行う際に、交付金の形で国から一定の支援が受けられることになった。 ハンターに支払う「お金」をめぐっては北海道・奈井江町が地元の猟友会に示した日当8500円(発砲した場合は1万300円)をめぐり、ハンター側が「安すぎる」と反発して出動を辞退する動きとなり話題になったばかり。ちなみに札幌市は日当が1回2万5300円で捕獲・運搬した場合には3万6000円となっている。 国の指定管理鳥獣指定でこうした状況をどこまで改善できるのか。伊藤信太郎環境大臣は4月の会見で、「今年の秋の出没対応に間に合うよう準備を進めていきたい」と述べていた。 指定管理鳥獣に指定はしたものの、予算を確保するには財務省との協議が必要で、今年度分は従来のイノシシ、シカを対象とした鳥獣捕獲等事業交付金からクマの分を捻出する形になりそうだという。 一方、北海道の鈴木直道知事は6月14日の会見で、「国が設定している農業被害防止にかかる(クマ)捕獲1頭当たりの単価が8000円なんですよ。妥当かどうかについて国に要望していかないといけない」と増額を求める方針を示した。ややこしい話だが、この捕獲交付金は農林水産省の支援策であるが、こちらも現実的な対応が問われるところである。