俳優・山西惇、「暇か?」でおなじみ『相棒』角田課長役は特別な存在。シリーズ開始から20年以上…当初は「クビになると思っていた」
――皆さんキャラクターが立っていて、角田課長もパンダカップを持って飄々と現れると思っていたら、正義感が強くて、時には熱くなって涙して…。とても印象的ですよね。 「いろんな脚本家の方が参加してくださって、それぞれがまだ書かれてない部分を書いてやろうみたいな感じで作ってくれるのでありがたいですね。それぞれのキャラクターが深みを増していって」 ――角田課長は、演じられていていかがですか? 「プレシーズンからなので、もう20年以上ですからね。ひとつのキャラクターをこんなに長くやらせていただくのは初めてだし、人生の半分いっちゃうんじゃないかっていうぐらいですから。特別な存在です。 他の仕事をするときに角田さんのキャラが出てくることはほぼないと自分でも思っているんですよね。大事にポケットにしまってあるというか」 ――「角田課長」って声をかけられたりしますか? 「『角田さん』って言われます。エレベーターで2人きりになったりしたとき、急に『今日はお暇じゃないんですか?』って言われたりはします(笑)」 ――パンダのコーヒーカップも可愛いですよね。 「あれもあんなに話題になるとは思ってなくてね(笑)。あれは、最初の寺脇(康文)さんのシリーズのときに、寺脇さんが子どもにあげちゃうんですよ。だからあのカップは2代目なんです。初代のカップもパンダの絵は描いてあったと思うんですけど、パンダが縁にしがみついてなかったんですよね。 それでスタッフさんも遊び心があるから、ネクタイの柄とか、スマホのストラップとか、お弁当の下に敷いているランチョンマットとかもパンダにしたりして。『ここまで俺、パンダ好きなんだ』って(笑)。実際パンダに愛着を感じるようになりましたね、本当に」
16年ぶりにレギュラー陣が集結
2003年、山西さんは『Dr.コトー診療所』(フジテレビ系)に志木那島の漁師・元木渡役で出演。2004年に『特別編』と『Dr.コトー診療所2004』、2006年に続編が放送され、2022年には映画『Dr.コトー診療所』(中江功監督)が公開された。 ――『Dr.コトー診療所』は映画にもなりましたね。 「はい。16年ぶりに中江監督のもと、コトー先生(吉岡秀隆)、志木那島の人たちと過ごしました。レギュラーの人がみんな戻ってきましたからね。かけがえのない時間でした。こういう作り方もあるなと思う。映像でもそういうことができるんだなっていうのはすごく感じました」 ――テレビドラマ版で最初に志木那島に行かれたときはどんな感じだったのですか? 「最初は全然帰してもらえなかったから、2週間ぐらい行っていたんじゃないかな。最初島に着いた日に撮ったら、そこから10日間僕は撮影がなくて」 ――その間は毎日どのように過ごしていたのですか? 「皆さんほぼ初対面だったから、ちょっとずつしゃべるようになって。同じ漁師役の船木(誠勝)さんが『あんまり暇なので、映画を撮るから一緒に作りませんか』って言ったんですよ。それで、皆で台本を書いて、船木さんが持ってきたカメラで映画を撮ったりしていました。それを船木さんのパソコンで、みんなで見たりして」 ――山西さんは劇団そとばこまちで台本を書いたり、演出もしていましたものね。退団後、わりとコンスタントに映像のお仕事も舞台もやってらっしゃいますね。 「どうですかね。でも、働いていないと気持ち悪くなっちゃうところがあって(笑)。2、3週間ぐらい空くとイライラしちゃうんです。セリフがしゃべりたいなって思っちゃう感じはありますね」 ――かなりお忙しそうに見えますが。 「たまに空くことがあるんですよ。すごく早い段階で、舞台だと2年先ぐらいまでお話が来ていたりするんですけど、その隙間っていうのがやっぱりできる年もありますよね。終わってすぐ次の現場ということにはならないこともある。 不思議なもので重なっちゃったりして、ちょっとズレてくれれば全部できるのにって(笑)。最近はもう空いたとしても、事前の準備がいかに大事かということがわかってきているので、先々の舞台の資料を集めて読んだり、そういうことをしているうちにすぐ時間経っちゃうんですけど、一時期はやっぱりちょっとイライラしてしょうがないときもありましたね」 連続テレビ小説『まんぷく』(NHK)、『99.9-刑事専門弁護士-完全新作SP 新たな出会い篇』(TBS系)、映画『イニシエーション・ラブ』(堤幸彦監督)、舞台『日本人のへそ』(こまつ座)、舞台『エンジェルス・イン・アメリカ』など多くの作品に出演。さらにバラエティ番組やクイズ番組にも多数出演し、“京大出身のインテリ俳優”としても広く知られることに。 次回はクイズ番組出演のエピソード、読売演劇大賞最優秀男優賞受賞、公演中の舞台『江戸時代の思い出』、2024年9月13日(金)に公開される映画『シサム』、11月に行われるリーディングアクト『一富士茄子牛焦げルギー』も紹介。(津島令子)