大河ドラマ「べらぼう」横浜流星、演じる蔦重の魅力は「『誰かのため』に動けるところ。自分もそうありたい」
NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺(つたじゅうえいがのゆめばなし)」(5日スタート、日曜・後8時、初回は15分拡大版)の連載第2回として、主演の俳優・横浜流星(28)が登場。日本のポップカルチャーの礎を築いた江戸のメディア王・蔦屋重三郎の半生を表情豊かに演じる。昨年の報知映画賞では2年連続の主演男優賞を受賞。勢いに乗る今年の顔は、「作品を愛してもらう一年にしたい」と新年の抱負を語った。(宮路 美穂) 【一覧】「べらぼう」主な相関図 幼い頃から本が好きだった。「家の近くに児童館があった。そこに本がたくさんあって、子どもの頃は児童館に行っては、本とかマンガを読んだりしていました。今は『この小説が(映像)作品になったらいいな…』とかちょっと違う目線で読んじゃったりしますけど(笑)、今でも読書は好きですね」。大河ドラマ効果で、書店が「べらぼう」コーナーでにぎわっていることを伝えた。「本当ですか!? うれしいですね」。屈託ない笑顔に、劇中の蔦重が重なる。 大きな戦のない江戸中期が、大河ドラマで本格的に描かれるのは初。横浜が演じる蔦重は花街・吉原育ちの町人で、のちに葛飾北斎や喜多川歌麿、東洲斎写楽らを世に送り出し「江戸のメディア王」の異名を取る。 「今で言えば、出版社の社長であり、企画・プロデュースも、営業もやる。いろんなことに興味があったり、責任感があったり、挑戦して失敗してもへこたれないところとか、たくさん魅力があると思うんですが、一番の彼の魅力は『誰かのため』に動けるところ。そういうふうに思える人間は強いなと思いますし、自分もそうありたいです」 蔦重は天才ではない。「何者でもない人物だから、見てくださる方々と同じ目線でいられるんじゃないかと思います。自分には才能がないけど、だからこそ出会う人々の可能性みたいなものを信じてる。『こいつは絶対やれる』って思って、そのためには自分が身を削ってでも行動するっていう行動力や発想力が、誰かの背中を押して、活力を与えられたらいいなと思います」 役づくりに対する真摯(しんし)な姿勢からストイックなイメージが強い横浜だが、「べらぼう」の蔦重は明るく、テンションも高め。地口(江戸弁のしゃれ、言葉遊び)もポンポン飛び出し、気になることがあれば向こう見ずにぶつかっていく。「監督から『明るく!』と言われますね。自分は特に朝が弱いので…(笑)。自分のなかでは朝から徐々にテンションが上がっていく。明るく演じたつもりでも『ちょっと暗いなあ』と言われたり。それが一番の課題かもしれません」 今年公開予定の映画「国宝」でも親子役で共演している渡辺謙(65)は、政のキーマンである幕臣・田沼意次役。食事に出かけた席で金言を受け取った。「謙さんもちょうど自分と同じ年のころに大河の主演をされたそうで『真っすぐ。全力でやればいい』と言葉をいただきました。その言葉を信じて、今も蔦重を生きています」 1話では、蔦重が田沼の元を訪れ直談判する場面もある。「今でいうと一国民が総理大臣に向かって直接意見を言うようなもの」。その「勇気」に驚かされつつも、どこかで自分の心の奥底にもその精神が流れているのだと共鳴する。 「自分の中で、日々『いつ死んでもいいと思って、後悔ないように生きる』っていうのをモットーにしているんです。だから日々、勇気を出しているつもりではいます。格闘家を目指していた自分がこの世界で生きていくって決めたのもひとつの勇気だったし、ここまで歩んできた選択のひとつひとつが勇気を持って進んできて、今があると思っています」 勇気を胸に秘めながら、ひたむきに役者の道を歩んできた。昨年の報知映画賞では、逃亡犯を演じた「正体」(藤井道人監督)での演技で2年連続の主演男優賞に輝いた。「大河ドラマの現場でも『おめでとう』と喜んでもらえました」。この道を進んでいく覚悟をさらに強くした。 多くの人からの注目を浴びて進む2025年は「やっぱり、この作品を愛してもらうっていうことに尽きる」と話す。「本当にあまり知られていない人物なので、変な先入観もないと思う。合戦はないけど商いの戦いや、人間ドラマが色濃く描かれているから、新たな大河ドラマとしてたくさんの方々に届いてほしいですね」 蔦重は「江戸のメディア王」と呼ばれたが、横浜自身は「〇〇王」を目指すつもりはないという。「王になったら、それで終わってしまうような気がして…。自分は王にならず、すべてにおいていつまでも高みを目指したい」。毎分、毎秒ごとに史上最高の自分に出会うため、横浜流星は横浜流星を更新していく。 ◆横浜 流星(よこはま・りゅうせい)1996年9月16日、神奈川県出身。28歳。雑誌モデルを経て、「仮面ライダーフォーゼ」(2011~12年)でドラマ初出演。14~15年の「烈車戦隊トッキュウジャー」で注目を集める。19年のTBS系ドラマ「初めて恋をした日に読む話」で一躍、知名度を高めた。現在ABEMA連続ドラマ「わかっていてもthe shapes of love」が配信中。
報知新聞社