「平安時代のプレイボーイ」は格が違った! クズエピソードで楽しむ『源氏物語』
日本文学史に燦然と輝く『源氏物語』。でも、その中で光源氏が今でいうクズ男のような行動を取りまくっていたことは意外と知られていないのでは? そんなクズエピソードを軸に、源氏物語の楽しみ方を解説。光源氏を身近に感じること、間違いなし! 【写真】吉高由里子主演・NHK新大河ドラマ『光る君へ』 ■クズだけれど優しいところもある 1月7日から放送スタートするNHK新大河ドラマ『光る君へ』は、『源氏物語』の作者・紫式部が主人公。彼女や、源氏物語の主人公・光源氏のモデルともいわれる藤原道長を軸に物語は進むが、改めて源氏物語にも注目が集まりそうだ。 古典文学に詳しく、『みんなで読む源氏物語』(渡辺祐真編、ハヤカワ新書)の筆者のひとり、三宅香帆さんにその楽しみ方を聞いた。 「源氏物語は幼い頃に亡くした母の面影を求めて、光源氏が宮中で多くの女性と恋愛を重ねる平安文学。そう聞くとなんだか気後れしてしまいますが、身近に感じられる要素はたくさんあります。例えば、光源氏のダメエピソードなんかはその好例でしょう」 例えば? 「朧月夜(おぼろづくよ)というヒロインとのエピソードを紹介します。彼女は光源氏の政治上のライバルである右大臣の娘なのですが、光源氏は深夜に彼女の屋敷に潜り込み、『いい声じゃないか。自分は光源氏なんだから言うことを聞きなさい』とか言って押し倒すんです」 いきなりムチャクチャなエピソード! 「朧月夜のほうも『噂どおりだなあ』などと言いつつ一夜を過ごすんですが、光源氏らしいのはワンナイトで終わらせず、その後も、左遷された須磨から朧月夜に手紙を送ったりするんですね。クズと優しさとのバランスが取れているのが光源氏の魅力です(笑)」 三宅さんによると、源氏物語が今も読み継がれている理由には、紫式部の設定のうまさが挙げられるという。 「光源氏は桐壺帝、つまり天皇の息子ですから、極めて高貴な身分。だからこそ、朧月夜のような特別な地位の女性との恋愛も成り立つわけです。 でも紫式部がうまいのは、その光源氏を天皇にはしなかった点ですね。天皇になってしまったら誰とも恋愛ができませんから。天皇になれるけれどならない皇子、という最強の主人公が光源氏なんです」