「私」から始めるソーシャルイノベーション。「私たち」が大切にすべきこととは何か
「うつわ」としてのローカルの可能性
■「うつわ」としてのローカルの可能性 川地:両社が築いてきたライフプロジェクト拡大の「うつわ」は、一見戦略的と見られる部分もあります。例えば地域や事業を分散しているのは、事業の持続可能性を高める側面もあると思います。しかし、人々の生活に溶け込む自然なエコシステムは、決して戦略的な部分だけではなく、例えばある地域住民の方が、ある地域で過ごしづらい状況になったとき、別の地域がアジールになる、といったように一人ひとりの生と向き合うなかで生まれるのだと感じました。 石塚:私はおふたりの人に対する向き合い方が印象的でした。「この人はこういう属性の人」と固定的に見るのではなく、その人のなかにも複数性があり、かつ時間軸のなかでいかようにも変化していくことを前提に「うつわ」を築いている。目の前の個人にしっかりと向き合うためには、具体的なローカルの場所や顔の見える関係性が大切なのですね。クリエイティブデモクラシーにおける近接性の重要さを再認識しました。 富樫:ひとつのローカルから人々の価値観が変わっていく。その連鎖は社会のレベルに接続していくと感じました。ソーシャルイノベーションを通じて「わたし」と「社会」をつなぎ直す。その先で「わたしたち」の手でつくり上げる民主主義へと向かう兆しが見えた気がしました。 牧 大介◎京都府宇治市出身。京都大学大学院農学研究科修了。2009年、西粟倉森の学校を創業、15年10月にエーゼロを設立。2023年4月に西粟倉森の学校と合併しエーゼログループを発足。エーゼログループ代表取締役CEO。 菅原健介◎中高時代をデンマークで過ごす。東海大学卒業後、セプテーニで広告業の営業職として勤務。 その後、理学療法士に転職。2012年に小規模多機能型居宅介護『絆』を開設、15年にぐるんとびーを起業。代表取締役。特定非営利活動法人ぐるんとびー理事長。 石塚理華◎千葉大学工学部デザイン学科・同大学院卒。大手事業会社でのデザインディレクション業務、受託開発会社の共同創業等、多分野での体験設計・デザインに従事。2021年に「公共とデザイン」を共同代表として設立。 川地真史◎フィンランドアールト大学 デザイン修士課程卒。フィンランドにて行政との協働やソーシャルイノベーションを研究後、エコロジーや人類学、仏教思想を軸にしたケアの実践を探求。Deep Care Lab 代表、「公共とデザイン」共同代表。 富樫重太◎立命館大学産業社会学部卒業。在学中にデザイン会社で勤務。株式会社Periodsの創業を経て、2019年に政策づくりプラットフォームの開発を行うissuesを取締役CDOとして共同創業。2021年より「公共とデザイン」共同代表。
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