<春よ光れ>’21センバツ・神戸国際大付/1 夏中止、先輩の分まで /兵庫
第93回選抜高校野球大会で4年ぶり5回目の出場が決まった神戸国際大付。コロナ禍による「夏の甲子園中止」で涙をのんだ3年生の思いを背負った新チームの足跡を3回の連載でたどる。 2020年5月20日、神戸市垂水区の神戸国際大付の学生寮。距離を空けて三角座りした選手ら十数人が、青木尚龍監督(56)から「夏の甲子園中止」を告げられた。3年ぶりの聖地を目指した3年生の夢は途絶えた。 青木監督は「お前たちの健康や命を考えて中止になった。今は前を向いて練習するしかない」と選手らに語りかけた。寮の様子は報道番組でも放送され、岡野翔海選手(3年)が「(甲子園が)なくなったなんて信じられない」と悔しがっていた。自宅で放送を見た西川侑志捕手(2年)は「お世話になった先輩たちの悔しさを晴らして、絶対に甲子園に行きたいと思った」と振り返る。 7月、中止になった甲子園予選に代わり、県の独自大会が開かれた。青木監督は「3年生みんなにユニホームを着せてやりたい」と、3年生30人全員をベンチ入りさせた。 チームは3年生の活躍で順調に勝ち上がった。8月7日、優勝校を決めない独自大会で、ベスト8を決める最終戦の相手は西脇工。青木監督は「今のベストメンバーで戦う」と、武本琉聖選手(2年)や阪上翔也選手(同)らを起用した。武本選手らが長打を放ち、8-2で勝利。ただ、試合後のベンチで浅川駿斗前主将(3年)は西川捕手に「やっぱり甲子園に行きたかったな」と漏らしたという。 校舎に戻った後、グラウンドでは3年生が後輩に練習道具などを受け渡した。夜久彪真選手(2年)は、森川凌捕手(3年)から「甲子園に行ってくれ。長打を打てるバッターになれよ」と木製バットとスパイクを託されたという。 翌日、リーダーシップを買われた西川捕手が新主将に指名され、新チームが始動した。引退した3年生は打撃投手として、練習相手を務めた。一方で、新チームの課題は山積みだった。3年生のように初回から長打を打てる選手がおらず、実戦経験も少なかった。この時はまだ、甲子園への道のりは険しかった。【中田敦子】=つづく 〔神戸版〕