富山県が旧近代美術館を解体、緑地化 27年利用開始へ
県は、閉館から7年半がたった旧県立近代美術館(富山市西中野町)を解体する。建物の活用策を検討してきたが、現在の耐震基準を満たしていないことが課題となり、方針が決まっていなかった。跡地は緑地化し、早ければ2027年春から利用できるようにする。新田八朗知事が27日、県庁で会見し説明した。 旧県立近代美術館は1981年、旧富山刑務所の跡地だった現在地にオープンした。地上2階、地下1階で延べ8200平方メートル。敷地は5千平方メートルで、富山市が所有する城南公園の東側に隣接している。県美術館(同市木場町)のオープンに伴い2016年12月に閉館した。 建物と土地の活用法は閉館前の15年から協議してきたが、耐震補強に約5億円かかることなどから有効な使い道が決まらなかった。17年にはサウンディング型市場調査を行ったが提案がなく、19年には公募型プロポーザルで売却する方針を決定。民間事業者を募り3件の提案があったが、いずれも選定基準を満たさなかった。一部の地域住民らからは、建物の再活用を求める声が上がっていた。
県が約3年にわたって富山市と協議した結果、市に無償で貸し付け、市が隣接する城南公園と一体で管理することになった。城南公園には市科学博物館があるほか、早ければ29年には天体観測施設としてドーム型観察室が開設する。 知事は解体を決めたことについて「能登半島地震で幸い崩壊することはなかったが(対応を)先延ばしにできないと考えた」と説明。「新たな施設をつくるよりも、緑地を増やす方が望まれていると判断した。多くの県民に利用してもらえるエリアとなるよう努める」と述べた。 県文化振興室によると、9月補正予算案に解体費を試算するための調査に必要な費用を計上する。解体費用は来年度当初予算に計上する方針。19年時点で5億円と試算されていたが、さらに膨らむ見通しという。