米利上げシグナルが点灯、元FRBエコノミストがインフレ期待を指摘
(ブルームバーグ): 米金融政策当局者にとって、債券市場のインフレ見通しは政策を決定する上で重要な要素だ。そしてトレーダーが発しているシグナルは、潜在的に問題をはらんでいる。
そう指摘するのは、パイパー・サンドラーのグローバル資産配分責任者で、元連邦準備制度理事会(FRB)エコノミストのベンソン・ダーラム氏だ。同氏は自身が調整を加えた長期インフレ期待の指標がここ数カ月でわずかに上昇し、当局の目標値である2%を上回っていることを指摘する。物価圧力が将来に続いていくと、トレーダーが見ていることを示している。
中央銀行にとってリスクとなるのは、こうした期待が実際のインフレを助長することであり、期待が膨らみ続ければ、米金融当局に利上げという形で反応を促す可能性があるとダーラム氏は言う。
ダーラム氏はインタビューで「抑制されていない長期的なインフレ期待ほど、再利上げを促すものはない。まだそこまでいっていないが、眉をひそめている段階だ」と述べた。
根強いインフレ指標と継続的に強い労働市場により、ウォール街の予測担当者や投資家は既に今年の利下げ予想を大幅に後退させている。次の一手が小幅の利上げではないかと推測する声さえあり、ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は18日、経済データが正当化する場合はその可能性があると示唆した。
NY連銀総裁、利下げの緊急性感じていない-データに基づき判断 (1)
18日に実施された5年物インフレ連動債の入札には旺盛な需要があり、インフレリスクを補う債券の需要が証明された。
ダーラム氏が特に憂慮するのは、将来のインフレ期待に関する市場ベースの長期的な指標だ。具体的には5年後から5年間のインフレ期待を反映するブレーク・イーブン・インフレ率(フォワードBEI)だ。
米金融当局には、長年にわたり政策の指針として使用してきた独自の指標があり、それは今年に入り上振れしている。ダーラム氏とパイパー・サンドラーのメリッサ・ターナー氏は17日のリポートで、その指標に調整を加えたモデルが、国債利回りに影響を与える他の要因を取り除くことで、純粋な長期フォワードインフレ期待をいかに明確に読み取っているかを詳述した。それには、流動性やタームプレミアム(一般に満期を迎える短期債を乗り換える代わりに長期債を保有することで投資家が求める上乗せ利回り)が含まれる。