「琉球ユタ」HAL、生前親交の谷村新司さん、KANさんの隠れた名曲をカバー、2人との思い出も明かす
琉球王朝時代から続く正統なユタ(沖縄地方で活動するシャーマン、霊媒師)で音楽家のHAL(55)がこのほど、カバーアルバム「55~fifty―five~」をリリース。今作に込めた思いを語った。 生前親交のあった谷村新司さん(昨年10月死去、享年74)とKANさん(昨年11月死去、享年61)が制作期間中に、この世を去った。2人に思いをはせ、アリスの「Wonderful Day」、KANさんの「よければ一緒に」「バイバイバイ」を急きょレコーディングし、収録を決めた。 友人のTHE ALFEE・坂崎幸之助(70)に相談し、「埋もれてしまってはもったいない名曲」の中からセレクト。「(谷村さんは)同じ時期にラジオ番組をやっていた頃、(スタジオで)アリスの『チャンピオン』をやっていたら『何やっているの?』と言って、覆面で演奏に入ってくれて『Wonderful』はワンダー(不思議)、フル(いっぱい)なんだと。『人の出会いはワンダーフル。偶然でも奇跡でもなく、不思議がいっぱいだろ。だから面白いんだよ』と、言っていたのが印象に残っていますね」 KANさんのバンド仲間にオファーして楽曲を収録した際には、自らドラムをたたいた。「KANさんはアレンジ力、構成だったり、楽曲の作りが天才的。プロが聴いても、一般の人が聴いても感動する曲は、なかなかない。こんなハイレベルのアレンジをしてきたんだと驚かされました…。『よければ一緒に』を歌うことで、僕の中では吹っ切れた部分がある。同じ時代に音楽を経験できてよかった、という感謝を込めました。谷村さん、KANさんには『お疲れさまでした』と伝えたいです」 今作は、人生で影響を受けたアーティストの隠れた名曲がテーマ。30曲程度をレコーディングした中から、大瀧詠一さん「FUN×4」や佐野元春「約束の橋」、安全地帯「真夜中すぎの恋」など、13曲を厳選して収録した。 HALは「シティーポップ系の曲とロック、ポップスがまざった形で完成させたのが、日本の音楽だと思っている。その屋台骨を支えるのはこの人たちかなというものを、主に選びました」と説明。「日本人が作った音楽には、こんなに素晴らしいものがいっぱいあると、分かってもらえれば。昔の『音』を、現代の『音』にすると、こんなに素晴らしくなる。10代、20代の若い世代に聴いてほしいですし、シティーポップを盛り上げていきたいです」 これまでユタとして20万人以上の悩みに寄り添い、アドバイスした経験を歌に変え、メッセージを届けてきた。 「心の中のモヤモヤ、頭の中では解決しないものを解消してくれるのが音楽だと思っています。仮に作り手、ミュージシャンがお医者さんだとしたら、音楽には、それぞれ(のリスナー)に合った癒やしを提供する薬の効果があると思う」と語る。「音楽は人を救うもの」と信じて、これからも音楽活動に取り組んでいく。(加茂 伸太郎)
報知新聞社