思春期の少年たちの心模様を3ペアそれぞれのアプローチで ミュージカル『GIRLFRIEND』まもなく開幕
ふたりの物語を「のぞき見しにきて」
――稽古中に印象的だった出来事や、印象的だった発言などがあれば。 高橋 ちょうど昨日のことなのですが。メインペアがいて稽古もその組み合わせでやることが多いのですが、スケジュールの都合で他の人と組むこともあるんです。で、瑠生が来れない時に巧麻くんが志音に声をかけてやっていたのですが、理由が、萩ちゃんには声をかけづらいと。 萩谷 なんでなんで! 高橋 なぜかというと、ここ(高橋&萩谷)の空気感が“お互いのもの”感が強くて……と言われて。僕らはそんなに意識していないけど、まわりから見たらもうふたりの空気感が出来上がっているんだと思ったのが、印象的でした。 萩谷 稽古場にマイクが僕ひとりしかいない時もあったから、僕はけっこう皆さんとやっていて。僕、唯一全員と稽古ができているんじゃないかな。 高橋 目の前でめちゃくちゃ浮気してたもんね(笑)。すごい複雑な気分になった。 萩谷 でもそう見えてるんですか? 志音とはできるけど、って……。 井澤 いや……なんかでもペア感が一番出来上がっている感じはある。でも結局(シャッフル公演で)全員やるからね(笑)。 ――小山さんへ、翻訳や演出上のこだわりを教えてください。 小山 訳詞は上田一豪さんですが、元々の英語はポップスなので同じ歌詞の繰り返しが多いのですが、日本語にするにあたり、全部(英語のままの)繰り返しではないけれど、ある程度その繰り返しの要素は活かしてくれています。それは、まだ彼らは若く語彙力もそんなに多くない。シンプルな言葉しか持たず、流暢にしゃべれないから間もできてしまう。その中でも一生懸命、相手にこのことを伝えたいというものがある。そのシンプルな言葉を意識しています。今みんなで「この言葉の裏の本当の意味はなんだろうね」という作業をずっとやっているような状態です。 ――皆さんにとって“音楽”はどういった存在ですか。 高橋 今日はじめてお客様に見てもらって……なんか、「見んなよ」という気持ちになったんです。なんでこいつら見てるんだろう、俺たちふたりで楽しんでいるんだから見るなよ、と。音楽って人と楽しむものでもあるけれど、限られた空間でひそかに楽しむものでもあるんだなと今日感じました。 萩谷 ふたりの物語だからね。 高橋 そう。誰かに伝えるということもあるのですが。だからこの作品をアピールするとしたら、「観に来てください」というより「のぞき見しに来てください」と思う。 萩谷 名言だね。でも本当に日常をのぞき見てもらうような作品。音楽……。音楽をめっちゃ嫌いって人、いるのかな。音楽って色々なジャンルがあるからその人の趣味嗜好がそのまま反映されるし。でも音楽のパワーというものはあると思う。音楽があるから何か頑張れるとか。マイクはウィルにミックステープを渡しますが、カセットテープに一から録音して、という作業はすごく大変で特別なことだと小山さんに教えてもらいました。そういう音楽を通してマイクとウィルが繋がれる時がある。色々なものを繋ぐ、音楽を介してコミュニケーションがとれる。いいものだな、と思います。 島 僕は本当に、ご覧のとおり会話が超苦手で。でも音楽は、唯一自分が安心できるホームであり、僕のコミュニケーションのひとつです。喋るより歌うことで伝えたいことが伝えられる。気持ちが込めやすい。だから逆に、ウィルとして演じていても歌になったとたんに安心して自信満々になりすぎちゃったりして、そこが難しかったりもするのですが。歌は本当に“もうひとりの島太星”のような、支えのようなものです。 吉高 たしかに人と人が繋がるひとつのツールだと思うし、僕にとっても大切なものです。僕は音楽が好き、歌が好きという力だけで今ここにいるような気がします。言葉にできない、音楽でしか伝わらないものをずっと探し続けていくことが人生の課題なのかなと思っています。 井澤 昔バンドをやっていたこともあり、進路を決めたりする際に音楽が関わっていたことが多いんです。高校に進学した時も、軽音楽部が盛んな学校だったのでそれを理由にそこに決めたり。東京に出てきたのも、最初は音楽をやろうと思ってのことでした。人生のターニングポイントにいつも音楽があり、その中で色々な出会いがあったので、音楽を通して色々な人と繋がり、コミュニケーションをとってきた。この作品の中でも、さきほど太星たちが披露した曲などは(劇中で)即興的に生まれた音楽だと思うのですが、音楽が生まれていく感覚などは自分の中にリアルにあります。音楽に乗せることで気持ちが言える、気持ちが動くというのも感じます。音楽は自分にとってかけがえのないものだと思います。 木原 僕にとっての音楽は、命なんじゃないかなと思います。命と引き換えにできるものが、音楽ともうひとつある。どれだけ齢をとっても音楽はやっていきたいし、これからもずっと自分と一緒にあるものなのかなと思うので……命と同じくらい大切なものです。 取材・文・撮影:平野祥恵 <公演情報> ミュージカル『GIRLFRIEND』 脚本:トッド・アーモンド 作曲・作詞:マシュー・スウィート 翻訳・演出:小山ゆうな 出演: 高橋健介、島太星、井澤巧麻(ウィル役・トリプルキャスト) 萩谷慧悟、吉高志音、木原瑠生(マイク役・トリプルキャスト) 2024年6月14日(金)~7月3日(水) 会場:東京・シアタークリエ