【衆院解散】短期決戦で何を訴える(10月10日)
公認を巡る激震が自民党内に走るただ中で、衆院は解散された。15日公示・27日投開票の衆院選は政権の維持、交代が焦点となる。政治改革は重要だ。一方で、他の論点は見えにくい。各党は政治改革と合わせ、国内外の課題解決への具体的な公約、政策を練り、選挙戦に臨むべきだ。 自民党は、派閥の裏金事件に関係した12人を非公認とする対応を決定した。政治資金報告書への不記載者は、比例代表への重複立候補を認めない。先の総裁選で石破茂首相は、関係議員の公認に厳しい姿勢を示しながら、総裁・首相就任後は軟化させたとされる。党内では「処分を蒸し返すのはおかしい」といった反発が出ているという。 蒸し返すどころか、一連の処分に対する国民の理解や納得は元々、得られているとは言い難い。裏金議員などと、やゆされ続けるのが不本意ならば、政治生命を懸け、有権者の支持を真[しん]摯[し]に求めるのが信頼を取り戻す道だろう。 公認の可否についての石破首相の決断は、内輪の事情や理屈を超え、世論を重視した結果に違いない。ただ、政治不信払拭への覚悟は示したとしても、解散間際まで続いた変節に、後手に回ったとの指摘や、なお不十分だとの批判はある。
野党は、共闘の在り方が課題として残ったままだ。立憲民主党の野田佳彦代表は野党議席の最大化を掲げ、国民民主党や日本維新の会などとの連携を模索している。政権交代の目標は一致しているとはいえ、個別の候補者調整は党利党略も絡み、一筋縄ではいかないようだ。 解散に先立つ党首討論は、政治とカネ問題が主な議題となった。立民の野田代表は政治改革の原点に立ち返り、企業・団体献金の禁止などを訴えた。石破首相は、自民党総裁の立場で献金の必要性を改めて説き、使途公開義務のない政策活動費の使用継続にも言及した。 政治改革を取り巻く論議は依然かみ合わない。衆院選を経ても堂々巡りなら、国政は停滞しかねまい。石破首相は党首討論で、主権者たる国民に選挙で判断を仰ぐ考えも強調している。政治への信頼回復につながる改革の方向性を指し示すのは、有権者一人一人の行動だと、重ねて胸に刻みたい。(五十嵐稔)