じつは、コロナ禍で東京一極集中の「東京」の意味が変わっていた!
人口減少日本で何が起こるのか――。意外なことに、多くの人がこの問題について、本当の意味で理解していない。そして、どう変わればいいのか、明確な答えを持っていない。 【写真】日本人は「絶滅」するのか…2030年に百貨店や銀行が消える「未来」 100万部突破の『未来の年表』シリーズの『未来のドリル』は、コロナ禍が加速させた日本の少子化の実態をありありと描き出している。この国の「社会の老化」はこんなにも進んでいた……。 ※本記事は『未来のドリル』から抜粋・編集したものです。また、本書は2021年に上梓された本であり、示されているデータは当時のものです。
「東京」の意味が「東京都」から「東京圏」へ置き換わった
少子化が進む日本においては、出産可能な年齢の女性の人数が、その地域の将来人口を左右する。当たり前の話だが、どんなに人口が多い市町村でも、高齢者ばかりで溢れ、出産可能な女性が皆無であれば、その人口は減る一方である。こうした観点からすれば、コロナ禍は地方消滅のスピードをさらに速めたともいえる。 東京都はコロナ禍にあっても、全国で最も他の道府県から人口を集めたが、東京都以外では神奈川(2万9574人)、埼玉(2万4271人)、千葉(1万4273人)、大阪(1万3356人)、福岡(6782人)、沖縄(1685人)、滋賀(28人)の7府県が転入超過となった。これは2019年と同じ顔触れだ。千葉県は前年比49・6%もの増加である。 ただ、2019年と比べると東京都は5万1857人減、埼玉県は2383人減、滋賀県は1051人減となっており、人を集める力が弱ったことを示している。東京都の場合、男性は前年の約27・3%、女性は45・1%の水準にまで下落している。残る5府県は2019年に比べると転入超過数が増えた。 大阪府の転入超過数1万3356人は、前年比では1・66倍だ。福岡県は2・32倍である。両府県の人口を集める力が大きかったことが分かる。しかしながら、8都府県の転入超過数を合計した12万1094人を100%とした場合のそれぞれの都府県が占める割合を計算してみると、全く違う姿が見えてくる。 東京都が25・7%を占め、続いて神奈川県が24・4%、埼玉県が20・0%、千葉県が11・8%で、東京圏だけで8割を占めている。大阪府は11・0%、福岡県は5・6%にすぎず、両府県は前年に比べれば状況が改善したが、全国各地から勢いよく人口を集めるまでの存在にはなっていないのだ。 前年比で転入超過幅が大きく伸びた大阪府でも、対東京都で見ると5698人の転出超過となった。ただし、前年に比べれば3割ほど減った。 これらの数字は2つのことを示している。1つは、コロナ禍をもってしても東京一極集中は止まらなかったものの、東京都が人口を吸引する勢いを緩める程度の影響はあったということだ。もう1つは、コロナ禍が東京一極集中の「東京」の意味を、「東京都」から「東京圏」へと置き換えたということである。 コロナ禍によって地方移住の関心は高まった。内閣府の「新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」(2020年5~6月)によれば、東京23区に住む20代の11・8%が「関心が高くなった」と回答、「関心がやや高くなった」(23・6%)と合わせて3人に1人が関心を寄せていた。 だが、実際に踏み切る人は限定的だった。地方から神奈川、埼玉、千葉の3県へは東京都に次いで転入超過数が多いことからも分かるように、実際には地方圏から東京圏へと人口が集まってきていたのである。 つづく「日本人はこのまま絶滅するのか…2030年に地方から百貨店や銀行が消える「衝撃の未来」」では、多くの人がまだまだ知らない「人口減少」がもたらす大きな影響を掘り下げる。
河合 雅司(作家・ジャーナリスト)