「家賃4100円の畳が腐ってる長屋で、母ちゃんは“死にたい”って泣いてるような暮らしで育ったけど、くらいガキじゃなかった」日本のゲットー地区、西成のラッパーSHINGO★西成が児童施設にクリスマスケーキを届けるワケ
「一番は挨拶。挨拶は人と人とを繋ぐ接着剤」
SHINGO自身にも小学3年生になる息子がいる。一番大事にしている子育て論とは? 「子供相手だからって上からも下からもなく、等身大で自然体でぶつかる。俺も等身大、自然体というのを前提に冷静に、やっぱ、そこは今言うべきやな!ってところは言うし。一番は挨拶ですね。挨拶は人と人とを繋ぐ接着剤。 おはよーって挨拶はファの音程で、そういう日々の声掛け的な挨拶以外の、もっと深い意味での挨拶、人と話をしたり付き合うときの“私はあなたの敵じゃないですよ”という表明の仕方、そういう価値観は、息子も小学3年生になってきたから、ところどころで話してます。挨拶の積み重ねが信頼の積み重ねなんやでって」 「自分の子ども時代と今の子どもを見て何か変化を感じるか」と問うと、意外な言葉が返ってきた。 「子どもの本質は何ら変わってない。変わらなきゃいけないのは大人やないですか。近所の公園で、スマホ片手に画面見ながら自分の子どもに“そっち行ったら危ないよ”って言ってるお父さん、お母さん、大っ嫌いですわ。正直、寂しいですねと思います。 片手間で子どもに危ないって言って達成感を感じてる親も、それが当たり前と思って何も感じない子どもも、ほんまもったいない。一度、スマホを手放して子ども見てみぃと思います。親が子どもをちゃんと見たら、世の中で問題視されてるようなOD(オーバードーズ)して緊急搬送される子も減るんやないですか」
ガキがガキらしくいられる居場所を
この12月にも東京、目黒区の小学校で児童2名がODで緊急搬送された。子供のODは全国的にも深刻な問題だ。東京では“トー横”がその震源地とされてきたが、大阪・道頓堀のグリコサインの下の“グリ下”でも子どもがたむろする現象が起きている。SHINGOにグリ下キッズについても聞いてみた。 「グリ下には近所にクラブがあって、もう7、8年前から見るからに自暴自棄の子どもたちがぎょーさんいてました。でも、そこに溜まってたら何が悪いの? 繁華街でみんなの目がまだあるからいいんとちゃいますか。あそこから発信してるんでしょう、何か。そこ塞いだって解決にはならんでしょう。それとは別にOD問題は根深い。 子どもらと時間をかけて信頼を築き、信じれる大人、頼れる大人がいると気づいてもらうことやないですか。今まさに、次の新しいアルバム作ってて。曲名で『居場所』っていうのも作ってるんですけど。みんな居場所を探してるんじゃないですか? 見えない居場所よりも見える居場所でいいんじゃないですか」 12月20日、ケーキを保育園に配り終えたSHINGO氏からメールが届いた。 〈保育園はいつもこどもたちが自由で苦戦しますが 今年はこどもたちを集合させてまとめるのに声潰れました! ガキのパワー! 恐るべし!〉 誰の子でもなく目の前の子どもの笑顔を。ガキがガキらしくいられる居場所作りを。SHINGO★西成からのクリスマスケーキを受け取った子どもたちの笑顔は、それは元気に溢れているのだろう。SHINGOの新曲「居場所」のリリースも楽しみだ。 取材・文/河合桃子 撮影/高木陽春
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