シュー・グァンハン × 藤井道人 監督が語る 旅はまだ終わっていない『青春18×2 君へと続く道』
青春18の旅はまだ終わっていない
池ノ辺 今回一緒に出演している清原果耶さんはどうでしたか。 シュー 彼女は、若いですが実力派の女優さんでした。撮影じゃないプライベートの清原さんは、本当に可愛らしくて、でもどこか大人の成熟した魂を持っているようにも感じました。ですから完璧ですね。 池ノ辺 監督から見た清原さんはどうでしたか。 藤井 彼女とはこれまで2回、今回含め3回一緒に仕事しているんです。15歳の少女だった『デイアンドナイト』(2019) の奈々、18歳の『宇宙でいちばんあかるい屋根』(2020) のつばめ、そして大人になった今回のアミと、その変遷と成長を親戚のおじさんのようにずっと見守らせてもらってきました。大人になった清原さんは、現場に気配りができるしスタッフのケアもできて、何よりグァンハンときちんとコミュニケーションを取れるような女優さんになっていた。それは清原さんだけじゃなくグァンハンも、2人が役として必要だと考えて率先してコミュニケーションをとってくれたのがすごく嬉しかったですね。 池ノ辺 今回の作品は、「旅に出る」というのが一つの大きなテーマでしたね。 藤井 もちろん恋愛の要素もあるけれど、親子の情、友情、仕事もあって、自分が自分自身を確認するという旅でもあったのかなと思います。 池ノ辺 監督にとって今回の旅はいかがでしたか。 藤井 まだ終わっていないですね。これからアジアツアーでアジア各地にこの映画が届いて、それぞれの観客に届いて、それでようやくこの旅は終えることができるんだと思います。撮影に関して言えば、ここ数年でこんなに楽しかった撮影はない、というくらい楽しかった。というのも、今回の撮影は、やっぱり映画ってすごい、こんなに楽しいことを自分の仕事にできたんだと確認する旅でもあったような気がします。海を越えて、これまで知らなかった仲間たちを一つのチームとして撮影ができる。それはそうそう簡単にできるようなことじゃない、すごく恵まれていると、そう思いました。 池ノ辺 では、グァンハンさんへの最後の質問です。グァンハンさんにとって、映画とは、演じるとはなんですか。 シュー それはずいぶん哲学的な質問ですね。僕が思うには、映画というのは時に世間の人たちの疑問に答えるようなものであり、また時には世間の人たちに問いを投げかける、そういうものではないかと思います。 池ノ辺 今回の映画についてはどうですか。 シュー 僕は、映画に出演する時にいつも観客の皆さんに僕が何かを伝えようと思っているわけではないんです。ただ、皆さんが映画をご覧になって、気づいてほしいことというのはあります。今回の映画は、人が旅に出ることの意味を皆さんに投げかけていると思います。旅によって人は自分自身を再発見することができ、それによってまた成長していくし癒やされもする。また、旅の途中で出会ういろんな人々、いろんな出来事、こういった出会いによって、自分の固定観念が崩されたりあるいは反省させられるということもあると思います。そして旅の一番の気づきは、おそらく、「世の中ってこんなに広いんだ」ということじゃないでしょうか。こんな広い世界から見れば、自分は本当にちっぽけな存在で、それを悟ることができれば、それまで自分が持っていた悩みも問題も、取るに足らないものだと気づけるはずです。より謙虚なスタンスでいろんな出来事や人々に接することができると、僕はそう考えています。
インタビュー / 池ノ辺直子 文・構成 / 佐々木尚絵