全国の職人を被災地に派遣 ボランティア団体代表理事 石岡博実さん(71) 令和人国記
屋根の補修は危険があり、一般の人が屋根から落ちて大けがなんてことも起きていました。そこで職人を連れ、神戸でブルーシートを屋根に敷くボランティアを始めたんです。職人たちも現地で感謝され、活動に誇りを持っています。その後、新潟県中越地震(平成16年)や東日本大震災(23年)、熊本地震(28年)などでも駆けつけました。でも、持ち出しも多い上、その期間は通常の業務ができず、減収で、1社だけでは体力的に無理。〝1人親方〟は駆けつけたいという思いはあっても、現実問題として無理なんです。災害時に屋根修理をうたう悪徳業者も出てくる中で、信用がある組織が必要だとして29年に災害復旧職人を派遣する協会を設立したんです。
能登半島地震はこれまでにない過酷な状況でしたが、山梨だけでなく宮城、東京などから職人83人が集まり、47棟の屋根にシートをかけました。ノウハウを生かして開発した災害用シートが役に立ちました。
災害が頻発する中、石破茂首相は「防災省」の新設を掲げていますが、それは私たちの活動と同じ方向です。全国の職人を被災地に派遣できるように組織を拡充すると同時に政府とも連携したいですね。(聞き手 平尾孝)
■いしおか・ひろみ 昭和28年、青森県生まれ。青森県総合高等職業訓練校(木工科)卒業後、建具店、工務店で働き、50年から呉服店で営業を担当し好成績をあげる。56年に呉服店を開業するも、倒産。横浜市の屋根施工会社に入社し、63年、山梨県大月市に屋根施工の日本ステンレス工業を設立。現在は同社会長。紅富士太鼓会長、ネパール日本友好協会の名誉会長も務める。