自動車認証不正、なぜ起きた 急がれる信頼回復
自動車大手のトヨタ自動車やホンダなど5社で、認証試験を巡る不正が発覚した。計38車種、累計販売500万台超に上る前代未聞の不祥事に、国内外で衝撃が広がった。不正はなぜ起きたのか。背景や課題を探った。 ―何が起きたのか。 国土交通省は3日、トヨタ、ホンダ、マツダ、スズキと二輪車大手のヤマハ発動機が、自動車の大量生産に必要な認証「型式指定」を取得する際に不適切な手続きを行っていたと発表した。昨年以降、ダイハツ工業や豊田自動織機でも同様の問題が発生したため、国交省の指示で各社が社内調査を行っていた。 ―「型式指定」とは。 大量生産される自動車の安全性を確保する仕組みだ。メーカーは新車を生産する際に安全性や環境性能などが基準に適合しているか国の審査を受ける。合格すれば「型式指定車」として完成車の社内検査だけで販売できるようになる。 ―どんな違反があったのか。 トヨタとマツダは、安全性を確かめる衝突試験でエアバッグがタイマーで作動するよう車両に加工した。ホンダは発売後の改良で車両が重くなった場合の再試験を省略するため、新車の認証時に実際よりも重い車体重量で試験をしていた。 ―不正が起きた理由は。 手続きが複雑で多岐にわたるため、人為的なミスが発生したケースも多い。各社は正しい基準で検査をやり直し、安全性に問題はないと説明しているが、制度軽視との批判は免れない。 ―国の対応は。 不正があった車種の大半は生産を終了しているが、トヨタ、マツダ、ヤマハ発動機の計6車種は現在も生産中で、国交省は安全性が確認されるまで出荷停止を命じた。6車種の年間販売台数は計約14万台規模で、約9割がトヨタ車。豊田章男会長は記者会見で「ブルータスよ、お前もか」と述べ、無念さをにじませた。 ―今後の課題は。 国交省は不正があった社に立ち入り検査を実施しており、新たな不正が見つかるかが焦点。一部の社からは不正の認定基準があいまいだとの指摘も出ており、制度見直しにつながる可能性もある。自動車産業は約550万人の雇用を抱え、日本の製造業の出荷額の約2割を占める経済の屋台骨。信頼回復に向けて再発防止が急がれる。