【双葉地区教育構想】町村の連携強め成果を(11月5日)
中高一貫のふたば未来学園(広野町)を中心とする双葉郡未来創造型リーダー育成構想(双葉地区教育構想)が7年ぶりに改訂された。浪江町に本施設が整備される福島国際研究教育機構(F―REI、エフレイ)の設立などを踏まえ、双葉郡を多文化共生社会の先進地にする将来像を新たに掲げた。構想の推進会議を構成する県教委や郡内8町村などは連携を一層強め、豊かな学びを特色とする地域を築いてほしい。 構想は世界に通用する人材育成を目指して描かれ、2006(平成18)年度から基幹校の富岡高(富岡町)などでスポーツ、国際分野の高度な教育が進められた。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故で富岡高が休校となり、新設のふたば未来学園に引き継ぐ形で2017年度に見直された。バドミントンやサッカーで五輪選手を輩出するなど実績を積み上げている。 第3次を数える新構想は、トップアスリート育成などの従来方針に加え、多様性を認め合う社会の実現を盛り込んだ。エフレイ設立などで外国人の移住が増えるのを見据え、日本語や生活面の指導とともに、さまざまな文化を受け入れ、生かす地域づくりに寄与する姿勢を示した。いわき市にある県立ふたば支援学校の郡内帰還を控え、障害の有無にかかわらず共に学ぶインクルーシブ教育の推進も打ち出した。教育をはじめとする生活環境の整備は、エフレイの研究者誘致に影響する可能性がある。構想に基づく取り組みの具現化が急がれる。
避難住民のさらなる帰還、県外からの移住促進に向けては、ふたば未来だけでなく8町村の学びの場の充実が欠かせない。双葉郡には各町村の教育長らがまとめた「教育復興ビジョン」もあり、新しい教育を創造して全国に発信する方針などをうたう。「構想」と「ビジョン」の役割を整理しつつ、住民を交えて郡全体の学校や生涯教育の在り方を議論する必要がある。 隣接するいわき市には近く、国連の地域リーダー国際研修センター(CIFAL=シファール)の拠点が国内で初めて設立される。市と、東日本国際大・いわき短大を運営する学校法人昌平黌が事務局を担う人材育成機関で、双葉郡の教育との連動も探ってほしい。(渡部育夫)