新NISA「右肩上がりのグラフ」は危険すぎる…理系FPが編み出した"本当の投資成果"を予測するすごいグラフ
■資産運用でもPDCAサイクルを回すことが重要 5000万円の財産の大半をつぎ込んでしまうような、FPによる投資計画の提案は、リスクを念頭に置かずに、図表1のグラフをイメージしているからなのかもしれません。確かに、図表1のように資産が順調に増えていくのなら、運用しなければ損です。でも、私たちのところに相談に来られたお客様は、直感的にそんなはずはないと感じ取ったわけです。こんなシミュレーションを使って資産運用のPDCAサイクルを回そうとしても、経済ショックが来ればサイクルは崩壊してしまいます。では、どうしたらいいのでしょうか。 資産運用でもPDCAサイクルを回すために、まずは適切な計画(Plan)を立てることが大切です。そのためには、将来の投資成果をリターンだけでなくリスクも含めて予測したいところです。そんなことができるのでしょうか。 実は、資産運用におけるリスクは可視化することが可能です。将来の投資成果はリターン(1年間の収益率)とリスク(リターンのブレ幅のこと。標準偏差)があれば計算することができます。 ■資産運用シミュレーターで投資成果を予測する 最近は、あちこちのホームページで、条件を入力すればどれくらいのリターンが期待できるか、つまり将来の投資成果をシミュレーションできるようになってきました(モンテカルロシミュレーションという手法を使っています)。私たちはモンテカルロシミュレーターも開発していますが、これから使う私たちオリジナルの資産運用シミュレーターは、確率の計算式をひねりだしてロジックを作っています。 最初に、120万円を先進国株式ファンドに一括投資すると1年後にどれくらいの金額になると予想されるか試算した結果を見てみましょう(図表4)。このグラフは縦軸が金額(万円)、横軸が投資期間(月単位)となっています。
■予測される投資結果の「実現確率」 リスクをまったく考えなければ、将来の投資成果を予測したグラフは真ん中の青い平均値のライン1本(冒頭で紹介した図表1のグラフと同じ)です。リスクを加味すると、上下にばらつきが生まれます。上のほうは投資成果が大きく、下のほうは投資成果が小さい、もしくは損をする場合です。ここでは実現確率という概念を使って、実現確率10%~90%まで10%きざみで投資成果の予測を見ていきましょう。 図表4には、120万円を先進国株式に一括投資して1年運用した場合、予測される投資結果が10%から90%までの「実現確率」ごとに記されています。表の一番下の「実現確率90%」の項目は、「101.7万円となる確率が90%」ではなく、「101.7万円以上となる確率が90%」と読んでください。あとは、順番に上に上がって「118.0万円以上となる確率が70%」「130.9万円以上となる確率が50%」……となって、一番上は「168.4万円以上となる確率が10%」と読みます。 ■投資期間を長くするほど元本割れ確率は低下する こうした計算をすると将来の元本割れする確率を計算することもできます。この条件での元本割れ確率を確認すると32.9%となっています。先進国株式に投資する場合、1年間の投資期間でみると約3年に1度は元本割れするだろう、という計算になります。逆にいうと3年に2度はプラスで終わるだろうと見ることもできます。 では、次に投資期間を10年に延ばしてシミュレーションしてみましょう(図表5)。元本割れ確率は8.1%と大きく低下し、実現確率90%でも128.9万円以上となり、かなりの確率で利益が出る予測になります。また、実現確率50%(中央値)では285.8万円以上と2倍以上になると予測されます。こうしたツールを使うことによって「○○のために○年後に○万円準備できる確率が○%」といった計算ができ、リスクの伴う資産運用でも「計画(Plan)」することができるようになります。 あとは、計画に沿って投資を行い(Do)、計画と実績を比較し分析(Check)、問題があれば改善する(Act)というPDCAサイクルを回せばOKです。計画と実績の比較分析(Check)をするためにも、計画(Plan)段階で、最終的な将来の投資成果の予測だけでなく、時間の経過に沿った推移予測も出しておくことで、実績と比較し分析(Check)できるようになります。