ソバ甘皮や殻、廃棄せず商品化して起業 師に共感、経済循環で「町なくさない」
人口約1200人、ソバ収穫量全国一の北海道幌加内町の高校を卒業した石川朋佳さん(25)=札幌市=が、これまで廃棄されていたソバの甘皮や殻を活用した商品開発を手がける合同会社を3月に立ち上げた。高校生の頃に出会い「師匠」と慕う80代のそば職人の「町を守りたい」という思いに共感して起業。石川さんは「人口減少が進む地域で経済が循環する仕組みを作りたい」と話す。(共同通信=石黒真彩) 中学の修学旅行で岩手県の農家を訪れたことで農業に関心を持った。「食」に特化したコースがある江別市の高校に進学したが、思い描いていた生活とのギャップから不登校に。文通を続けていた岩手の農家に悩みを打ち明けたところ、段ボールいっぱいの野菜と「人生の1年くらい大したことないよ」と書かれた手紙が届いた。その言葉で前を向けた。 在籍していた高校を退学し、農業を学べる幌加内高校に再入学。「そば」という珍しい必修科目で、外部講師としてそば打ちを教えに来た地元の坂本勝之さん(82)と親しくなった。小樽市の大学に進んでからも町に通い、物産展や商談会に連れて行ってもらった。
坂本さんが「町をなくさないためには原料生産だけでなく、町内で加工して付加価値を付けないと」と訴えるのを聞き、自分が一緒にできることを考えるように。新卒で入社したメーカーの営業職を2年で退職し、ソバの未利用資源を活用した事業に取り組む「トヅキ合同会社」を起業することに決めた。 手がけているのは、廃棄されるソバの甘皮を使った茶の開発。ハーブティーのような優しい味わいといい、改良を続けている。そば殻を使って染めた衣服も制作。イベントなどで予約販売を受け付けている。今後は高校生の教育活動にも力を入れたいと考える。 石川さんは「一度は通えなくなった高校生活を幌加内に救われた。小さくても町内で経済を回すことで、100年後もなくならない町をつくりたい」と未来を見据えた。