48歳の専業主婦、83歳の認知症父を遠距離介護中。「父にもっと早く聞いておけば良かった」と後悔していることが3つあります
【親が認知症になる前にやっておくべきこと その1】既往症や服薬歴の確認
佳子さんが最初に挙げたのは「既往症や服薬歴」。 「父の保険証やお薬手帳の保管場所については以前から教えてもらっていましたが、若い頃の既往症・服薬歴についても確認しておけばよかったと後悔しています。 ここ数年の受診歴や服薬歴についてはお薬手帳や病院の予約票などからある程度は推測できましたが、現役時代の健康状態についてはさっぱり……」と佳子さんは言います。 認知症の兆候に気付いて受診をした際、主治医から今後の治療のためにこれまでの病歴や薬歴を詳しく聞かれたとのこと。 ●健康情報を時系列で記載したノートを、玄関先に置いておくのもおすすめ 親の認知面がしっかりしているうちに、持病や既往症などの情報を把握したメモを作っておくことで、認知症以外の急な病気やケガなどの際にも役立ちます。 ちなみに筆者は親の病歴を時系列で記載したノートを、玄関先の救急隊が目につきやすい場所に置いています。救急搬送の際に受け入れ先の病院を探してもらうときにも非常に役に立っていると実感します。
【親が認知症になる前にやっておくべきこと その2】交友関係や思い出の場所を聞いておく
ふたつめに挙がったのは、父の交友関係や思い出の場所などでした。 「現役時代の父は、いわゆる『企業戦士』。夜討ち朝駆けで働いていました。私たち家族と過ごす時間が少なかったので、若い頃の交友関係、例えば毎年届く年賀状の差出人たちとの関係などが把握できていないんです。 年賀状のやりとりが“形だけ”の関係だった場合は、相当長い間疎遠になっているでしょうし、例えば今後父が施設に入所したり、将来亡くなった時にお知らせすべき相手がいるのかなど、できれば知っておきたいですよね」 と佳子さんは話してくれました。 ●今朝のごはんは覚えていなくても、幼少期の記憶は鮮やかというケースも 認知症の人は、最近起こったことを記憶にとどめておくのは難しいけれど、昔のことは鮮明に覚えているというケースが少なくありません。 今朝の朝ごはんを食べたかどうか忘れてしまっても、幼なじみとのエピソードや現役時代の勤務先の電話番号などは鮮明に記憶に残っているケースを筆者は何人か見てきました。 昔の幸せな記憶を蘇らせてあげる これは筆者の実体験ですが、認知症の母を訪ねてきた叔父(母の弟)が、「姉貴、昔の家の間取りを覚えている?」とおもむろに紙を取り出し、記憶をもとに見取り図を描き始めました。 するとそれまで無表情だった母の顔が生き生きと輝き、「ここが押し入れ。金魚鉢は下駄箱の上に……」と、昔暮らした家の様子をつまびらかに説明し始めたのです。 楽しく幸せな時期を一緒に過ごした人たちとの交流は、ときに認知症の人の心を明るくしてくれるものなのでしょう。この先認知症が進行すれば、家族の顔さえ忘れてしまう可能性もあります。 思い出話や写真を交えながら、昔の幸せな風景を記憶に蘇らせてあげることは、本人の心の安定に繋がり、それが介護する側の家族の不安や緊張がほぐれるきっかけにもなるのです。 もちろん、認知症の進行によってはそれが叶わないこともありますが。