「財政非常事態宣言」に沈んだ町で進む再生への動き 地元企業、高校生らが独自の取り組み
「令和12(2030)年には(町の貯金にあたる)基金が底をつく恐れがある」として昨年9月に「財政非常事態宣言」を出す事態に陥った山梨県市川三郷町は、行財政改革推進計画を取りまとめ、財政再建を図ろうとしている。それと同時に地元企業や町と協定を結ぶ民間組織などが、町の活性化に向けた各種の取り組みを開始した。破綻懸念の町のイメージ改善も狙う〝民〟の草の根の動きが始まった。 【ランキング】訪日外国人の都道府県別訪問率、トップとワーストは? ■自虐的なフレーズで 「もともと、お祭りが好きな地域。沈んでいる町の雰囲気を変えて、盛り上げようと初めて企画した」 市川三郷町の製紙会社、金長(きんちょう)特殊製紙の5代目、一瀬清治さんは、4月13日に地場産業である和紙PRのために開催した「金長マルシェ」の狙いを強調した。金長などの地元の和紙製造会社による「おさんぽ凧作り教室」や「折り染め体験」など、紙にちなんだイベントや、キッチンカーなども出店し、小学生や未就学児連れの親子らが思い思いに作品作りやグルメを楽しんでいた。 イベントの案内には「財政非常事態宣言などネガティブなイメージの町を元気にしたい」と、半ば自虐的なフレーズを使っており、それも注目を集めた。 ■MTB拠点で公園再生 町のホームページによると都市計画公園とある町立「市川公園」は、少年野球で使うグラウンドだけは整備されているが、それ以外は荒れ果てた状態だ。審判台があることでそれとわかるテニスコートも、大人の胸の高さまでの草で覆われている。展望台への階段なども草がかぶさり、手すりがみえない状態だ。 4月6日午前。マウンテンバイク(MTB)の普及推進を進める「YAMANASHI MTB山守人」のメンバーや遠藤浩町長を含めたボランティアの町職員ら40人が集まり、自前のエンジン式の刈払機やチェーンソーなどを使って、雑草や通路側に張り出した木の枝などを刈り取り、それを軽トラックで集積所まで運んだ。満開のサクラの下で雑草がなくなり、公園らしさを取り戻しつつある。 山守人は昨年4月に町と包括提携し、MTBコースの整備や体験会の開催などで、活性化に取り組んでいる。代表の弭間(はずま)亮さん(42)は、「市川公園をMTBの拠点としながら、公園として活用できるように再生させる」と話す。市川公園は県有数の景勝地である四尾連湖(しびれこ)までのサイクリングロードのスタート地点としても利用できるとみており、今後も草刈りなどの作業を続ける。