池袋暴走事故の受刑者死亡 被害者遺族は「誰も幸せにならない」
2019年4月に東京・池袋で11人が死傷した池袋暴走事故で、当時車を運転していた旧通産省工業技術院元院長の飯塚幸三受刑者(93)が収監中に死亡したことがわかった。この事故で妻子を失った松永拓也さん(38)は25日、報道陣の取材に「刑務所に入り、そのまま命を落とすというのは非常に無念だったのでは。交通事故は誰も幸せにならない。犯罪被害、もしくは加害を社会から減らす活動を続けていきたい」と語った。 【写真】記者団の取材に応じる松永拓也さん=2024年11月25日午後4時25分、沖縄県西原町、小野太郎撮影 事故では、松永さんの妻真菜さん(当時31)と長女莉子ちゃん(当時3)が亡くなった。松永さんは「(受刑者が)妻と娘と出会うことがあるなら、一言謝ってほしい。それ以上の強い気持ちは今はない」と述べた。 関係者によると、飯塚受刑者は刑務所に収監中の先月26日に亡くなったという。 ■6カ月前に面会 「彼の経験を活動に生かす」 松永さんは心情等伝達制度を使い、今年3月、刑務所職員を通じて自身の思いを飯塚受刑者に伝えた。それがきっかけで5月には、刑務所での面会が実現。松永さんの「世の中の高齢者やその家族に伝えたいことは」という問いに、飯塚受刑者は「早く免許を返すように伝えてください」と答えたという。 この日、松永さんは刑務所での面会にも触れ、「彼の経験、言葉を未来の糧として活動に生かしたい」と話した。 池袋暴走事故では、真菜さんと莉子ちゃんの2人が死亡し、9人が重軽傷を負った。事故を巡っては、東京地裁が21年、飯塚受刑者に対し自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致死傷)罪で禁錮5年の判決を下し、確定した。事故の遺族らが加害者側を相手取った損害賠償請求訴訟では、同地裁が約1億4660万円の損害賠償の支払いを命じる判決を出していた。(小野太郎、御船紗子)
朝日新聞社