収量3割増、大豆で2品種開発 豆腐に加工適性
農研機構は7日、従来品種より3割以上多収の大豆の新品種「そらみずき」と「そらみのり」を育成したと発表した。栽培適地は「そらみずき」が関東~近畿、「そらみのり」は東海~九州。特に豆腐への加工に向く。両品種ともさやがはじけにくく、収穫ロスが抑えられるなど、「農家の実際の条件下で多収であることにこだわった」(同機構)とする。 「そらみずき」と「そらみのり」を並べた写真 両品種とも、米国の多収品種と加工適性の高い国内品種を交配し育成した。種子の本格普及の時期は現時点で未定だが、「そらみずき」は24年産向けにJA全農が種子数百キロの供給を予定する。 一般圃場(ほじょう)での試験では、従来品種の1・3倍以上の収量が確保できた。10アール当たり子実重は「そらみずき」は2021年に314キロで、従来品種の「里のほほえみ」の1・37倍。22年には254キロで同2・33倍を確保できた。いずれも茨城県内での試験。 「そらみのり」は21年に201キロで、従来品種の「フクユタカ」の1・31倍、22年には298キロで同1・56倍となった。いずれも、兵庫県内で試験を行った。
両品種とも、さやがはじけにくい難裂莢(なんれっきょう)性を備える。収穫前にはじけたり、収穫機に当たってはじけたりして、ロスとなる量を減らせる。葉焼病に抵抗性を持つが、ダイズモザイクウイルスやダイズシストセンチュウの被害は受けるため、発生圃場での栽培は向かない。 タンパク質含有量は、「フクユタカ」より「そらみずき」は低く、「そらみのり」はほぼ同等で、豆腐に問題なく加工できることをメーカーが確認済み。 種子の供給量は現時点で限られるが、種苗会社と連携し今後、拡大を目指す。同機構は「国産大豆の生産量を増やし、自給率向上を目指したい」と強調。東北や北陸などに向く多収性の大豆新品種の育成も進めている。(丸山紀子)
日本農業新聞