行商をしていた姿を今に伝える貴重な写真、70年以上前に撮影された京都の風習とは
今は春に開かれる祭りを通して残される伝統、頭に載せて柴運びをする「大原女」
紺の着物に赤いたすきをした二人。集めた柴(しば)を運び出すところだろうか。右の女性は手拭いをかぶった頭の上に、わらで編んだ輪をクッションにして、柴の束を載せている。1950(昭和25)年5月号の特集「自由への道を歩む日本」の1枚で、京都市北東部の山間部に位置する八瀬付近で撮影された。 ギャラリー:ナショナル ジオグラフィックが見た日本の100年 八瀬と近隣の大原では、古くから大原女(おはらめ、おおはらめ)と呼ばれる女性が柴や薪(まき)の束を頭に載せて、京の町まで行商に出かける風習があった。昭和に入っても、戦中・戦後の物資不足の時期には、まだ燃料として柴の需要はあったようだ。しかし、1950年代になると、ガスの普及に伴って需要は落ち込み、行商の風習も廃れていく。その一方で独特の装束が観光客を引きつけ、大原女の文化はこの地域の観光資源となった。今では、毎年春に開かれる祭りを通してその伝統が伝えられている。 ※この記事はナショナル ジオグラフィック日本版2024年11月号に掲載されたものです。
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