これは紅麹や小林製薬というより「機能性表示食品制度」の問題だ
「ああ、やってしまったか」と憂鬱な気分でいる。 小林製薬の紅麹(こうじ)関連製品による健康被害の問題だ。 3月22日、小林製薬は、同社の販売していた紅麹を原料とする機能性表示食品を摂取した消費者から、腎疾患などの健康被害が発生したと報告を受けた、と発表した。当該製品は回収対象となった。問題の製品は「紅麹コレステヘルプ」「ナイシヘルプ+コレステロール」「ナットウキナーゼさらさら粒GOLD」の3種類。この時点では、13人が被害を訴えており、うち6人が入院だった。3月26日には、厚生労働省が2人死亡、106人が入院と発表した。28日には新たに2人の死亡が発表されて、死者は合計4人に。調査が進むと被害者数は増え、4月2日には延べ177人の入院が確認された。 4月15日時点では、入院者数延べ233人、不調を訴えて受診した者延べ1393人という数字が出て来ている。一体何が原因なのかは調査中だ。いろいろな推測は出ているものの、まだはっきりとしたことは分かっていない。 なぜ、私が「ああ、やってしまったか」と思ったのかといえば、健康被害を発生させた疑いのある3種類の製品が、国の定める「機能性表示食品」だったからである。 なので以下の話は、小林製薬の紅麹を原料とした食品が健康被害を起こしたことを前提としては「いない」。読む前にここをはっきり認識していただきたい。問題は小林製薬ではなく、制度それ自体にあるのだ。 機能性表示食品の制度を以前調べたことがあって、「これはまずい。こんなことをやっていたら早晩とんでもない被害が出るのではないか」と心配していたのだ。順を追って説明していこう。 ●トクホと機能性表示食品の大きな違い 機能性表示食品とはなにか、と調べると消費者庁のウェブサイトに「事業者の責任で、科学的根拠を基に商品パッケージに 機能性を表示するものとして、消費者庁に届け出られた食品」と書いてある。根拠があるのかないのか、これではよく分からない。 名称から似たような印象を受ける制度として、「特定保健用食品」がある。通称トクホ。特定保健用食品のほうは消費者庁ページに「特定保健用食品は、からだの生理学的機能などに影響を与える保健効能成分(関与成分)を含み、その摂取により、特定の保健の目的が期待できる旨の表示(保健の用途の表示)をする食品」とある。 そして「特定保健用食品ですよ」と表示をするには、その食品ごとに食品の有効性や安全性について国の審査を受け、許可を得る必要がある。 特定保健用食品と機能性表示食品の何が違うかといえば、特定保健用食品は「からだの生理学的機能などに影響を与える保健効能成分(関与成分)を含む」、つまり「有効成分が入っているよ」と国(厚生労働省が諮問する食品安全委員会と薬事・食品衛生審議会)が調べて確認しているのに対して、機能性表示食品は「事業者の責任で、科学的根拠を基に商品パッケージに 機能性を表示する」もの、という点だ。 機能性表示食品は、国は効果があるかないかについての判断はしていない。事業者が「有効成分だと言っている」“だけ”なのだ。 それが具体的にはどういう違いになるのか、もう一度整理しよう。 特定保健用食品ははっきり有効成分が入っていると国が保証する。メーカーも効能をパッケージに書いてもよい。 機能性表示食品もまた、入っているのは有効な成分だよとメーカーがパッケージに書いてもよい、という制度だ。しかし有効な成分かどうかを保証するのは食品をつくったメーカー、それが効くよと主張するのも同じくメーカー、ということになる。 今、気軽に「有効」と書いてしまったが、そもそも有効成分が入っていて効果があるなら、それは医薬品だ。 医薬品は薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)により厳しく審査され、効くことが厳密に国によって保証される。薬が効くということは、使い方を間違えれば副作用が出るということだ。薬効と副作用は表裏一体だからである。だから医薬品は医師が処方しなければならないことになっている。 もう一歩突っ込んで、具体的にどのような手続きを行えば特定保健用食品ないしは機能性表示食品と名乗ることができるかを調べると――。