都市対抗からプロの世界へ 気になる注目ドラフト候補は…
7月19日から12日間、東京ドームで開催された第95回都市対抗野球大会は三菱重工East(横浜市)が見事初優勝を収め、幕を閉じた。今大会では、活躍が著しい新人選手(高卒は2年目以内)に贈られる若獅子賞は2007年以来、17年ぶりに該当者がなかったが、ドラフト解禁イヤーを迎えた選手たちの活躍が目立った。 まず1人目は、優勝した三菱重工Eastに補強選手として加入した東芝(川崎市)の下山悠介内野手。今大会は2番・指名打者で全5試合にスタメン出場。初戦の伏木海陸運送(高岡市)戦では2本の本塁打を放ち、この日の全打点を挙げた。SUBARU(太田市)との2回戦では3安打と猛打賞の活躍で、補強選手ながらバットで打線を牽引。日本通運(さいたま市)との準々決勝、東京ガス(東京都)との準決勝でも複数安打を放ち、チームの勝利に貢献。JR東日本東北(仙台市)との決勝戦では無安打に終わったものの、チームの一員として躍動し、打撃賞と優秀選手(指名打者)に輝いた。 下山は慶応高から慶大を経て、2023年に東芝に入社。慶応高では主将として、3年時に春夏ともにチームを甲子園へと導いた。慶大でも主将としてチームを牽引。1年春に神宮デビューを果たすと、同年秋からレギュラーとして活躍し、リーグ通算79試合出場で82安打、打率2割7分9厘をマークした。4年時にはプロ志望を提出するも、指名漏れを経験。プロ入りとはならなかったが、東芝では1年目から目まぐるしい活躍で存在感を発揮した。社会人1年目、昨年3月に開催された第77回JABA東京スポニチ大会では全5試合にスタメン出場。SUBARUとの準決勝では決勝3ランを放つなど、チームに合流したばかりの下山が打線を引っ張り、チームを優勝に導くだけでなく新人賞を受賞した。西関東第2代表として出場した昨年の都市対抗では、デビュー戦で本塁打を放つ活躍ぶり。チームは2回戦敗退を喫したが、個人としては全国の舞台で手応えをつかんだ。 今年は西関東二次予選でチームは敗れ、都市対抗出場を逃したが、同予選で敢闘賞に輝いた下山は第1代表の三菱重工Eastの補強選手に選出され、2大会連続での都市対抗出場を果たした。その名の通り役割を全うし、見事チームを優勝に導いた下山。ドラフト解禁イヤーに持ち味を発揮し、アピールに成功した。 2人目は三菱重工West(神戸市・高砂市)のエース・竹田祐投手。右腕は大学、社会人2年目と過去に2度の指名漏れを経験している。今秋“3度目の正直”でプロ入りを果たすべく、今年の都市対抗で持ち前を発揮した。 履正社高でロッテ・安田尚憲内野手らとともに17年選抜準優勝に導いた竹田。高校卒業後は明大へ進学すると、1年春からリーグ戦に登板。4年時には、中日・柳裕也投手、広島・森下暢仁投手らが背負ったエースナンバー「11」をつけ、リーグ通算39登板で11勝5敗、防御率2.54。プロ志望届を提出したが、指名されず。それでも社会人経由でのプロ入りを目指して三菱重工Westに入社した。社会人では1年目からエースとして頭角を現した。初の都市対抗は日本製鉄鹿島(鹿嶋市)との1回戦の先発を任され、8回2失点と好投。その後中継ぎ陣がつかまり、サヨナラ負けを喫したが、上々の全国デビュー戦となった。同年秋の日本選手権ではJFE西日本(福山市・倉敷市)との1回戦で完封勝利を挙げるなど先発救援計3登板でわずか1失点。チームは準々決勝のENEOS(横浜市)戦で敗れたが、竹田は9回1失点の快投を披露した。 1年目から存在感を発揮していた右腕だったが、ドラフト解禁イヤーとなった昨年は一転。都市対抗近畿二次予選では3試合に先発するなど計4試合に登板も、毎試合失点し、白星もなし。チームは都市対抗出場を決め、2年連続で開幕試合の先発を任されたがJR東日本(東京都)相手に4回途中5失点で敗戦投手に。ドラフト上位候補として注目されていたがアピール不足に終わり、昨秋のドラフト会議で竹田の名前が呼ばれることはなかった。 2度のドラフト指名漏れを経験した竹田だが、社会人3年目を迎えた今年はエースとしての意地を見せている。都市対抗近畿二次予選では3試合に先発して、2勝1敗で防御率1.64。第1代表決定トーナメントの初戦(2回戦)で敗戦投手となり、チームも第3代表決定トーナメントに回るなど、苦しいスタートを切る形となったが、日本製鉄瀬戸内(姫路市)との第3代表決定戦で8回2失点(自責1)の好投を披露し、チームを都市対抗進出に導いた。自身3度目の都市対抗、チームの開幕戦、王子(春日井市)との1回戦で3失点完投勝利を飾り、2年ぶりの都市対抗白星。JR東日本東北(仙台市)との3回戦では6回2失点で降板。打線も1得点と振るわず、チームは準々決勝進出とはならず敗退したが、150キロ越えの直球で相手打線を圧倒し、何度もピンチを脱する投球で持ち味を魅せた。 3人目はNTT西日本(大阪市)の伊原陵人投手。智弁学園高では3年春に甲子園出場。その後大商大に進学し1年春からリーグ戦に出場した。2年秋に先発の座を手にすると、リーグ戦で3勝を挙げて最優秀投手賞、新人賞に輝いた。3年時以降も主戦投手として活躍し、プロ志望届を提出するも、指名漏れ。2年後のプロ入りを目指して、NTT西日本に入社した。社会人では1年目から全国デビュー。昨年の都市対抗では三菱重工East(横浜市)との1回戦で先発を託され、6回2失点でクオリティスタートを記録したが、打線がわずか1得点と沈黙し、チームは敗れた。ドラフト解禁年を迎えた2年目の今季はJABA大会でも成績を残し、都市対抗近畿二次予選では、先発と中継ぎで計4試合に登板し、3勝1敗。20回1/3を投げて、わずか2失点(自責1)で防御率0.44と圧巻の数字を残し、チームを都市対抗出場に導いた。本戦では三菱自動車岡崎(岡崎市)との1回戦に先発し、5回1失点の好投。2度目の先発マウンドとなった西濃運輸(大垣市)との準々決勝では、6回途中4失点で降板。その後タイブレークの末に敗れてチームはベスト8で終戦した。それでも最速148キロの力強い直球で押していく投球で、間違いなく存在感を見せつけた。昨秋は1学年上の先輩にあたる泉口友汰内野手が巨人からドラフト4位で指名され、1年目から1軍でも成績を残している。泉口に続き、プロの扉を開きたい。
VictorySportsNews編集部