青森山田に毎年決勝で全国行きを阻まれる 高校サッカー八戸学院野辺地西の想い
【青森山田は「ライバル」「目標」「やりがい」】 とはいえ、青森山田の壁はとにかく高い。「それこそ今の高校生は生まれた時からずっと山田が全国に行っている状況ですからね。まあ強いですよ」という三上監督の言葉を待つまでもなく、ここ10年の成績を見ても、世代最高峰のプレミアリーグで3度の日本一を勝ち獲り、選手権では4度も全国制覇を経験。高校年代最強と言って差し支えない彼らの存在を、八戸学院野辺地西の選手たちはどう捉えているのだろうか。 昨年からレギュラーを務め、何度も県制覇を懸けて青森山田と対峙してきたキャプテンの堀田一希は『ライバル』だと言いきった。「常に山田を意識してできていることは大きいと思っています。山田を倒さないと新しい景色は見えないですし、全国にも行けないわけで、自分たちにとって山田はライバルだと思います」。 過去の青森山田との対戦時にはひとりでチャンスを作り出すなど、大きな存在感を発揮していた3年生フォワードの成田涼雅は『目標』というフレーズを口にする。「日本一を獲っている山田が青森にいるからこそ、それを目標としてみんなでやってきていますし、そこを倒して歴史を変えることに意味があると思っているので、山田がいるから自分たちも成長できるとプラスに考えて、ずっとやってきています」。 20年間にわたって青森山田と対峙し続けている三上監督の言葉が印象深い。「みなさんからは『他の県に行けば全国に出られる力はあるよ』と言われます。そう言ってもらえるのはすごく嬉しいんですけど、やっぱり青森県は青森山田という存在を抜きにできない県じゃないですか。だから、子どもたちには『日本一のチームがこんなに身近にいる県なんてほかにないぞ』と言うんですよ。そういう面では彼らの存在はポジティブな要素ですし、自分のなかでも『やりがいがあるな』とは思いますね」。
【今年度の新人戦は1点差で敗戦】 1年前の2023年11月13日。ちょうど1週間前の選手権予選決勝で、青森山田に0-9と大敗を喫していた八戸学院野辺地西は、新チームで戦う初めての大会となる県新人大会の決勝に挑んでいた。 もちろん相手は青森山田。試合は後半14分に先制点を奪ったものの、最後はアディショナルタイムの失点で逆転負け。またもや勝利には届かなかったが、チームにはこの試合から確かな自信が芽生えていく。 「僕が指導してきた21年間のチームで最強だったのは、山田とPK戦まで行った2019年のチームなんですけど、今年のチームはあの時と似ているんです」(三上監督) かつてないほど真剣に絶対王者の背中を追い掛ける八戸学院野辺地西の冒険は、この時、静かに幕が上がっていた。 後編「ついに選手権県予選決勝へ 八戸学院野辺地西の冒険」につづく>>
土屋雅史●取材・文 text by Tsuchiya Masashi