“要る人”か、“要らない人”か?人は2種類しかいなくなる?
人気連載「齋藤薫の美容自身 STAGE2」。今月のテーマは「“要る人”か、“要らない人”か?人は2種類しかいなくなる?」。 今後は人間、「社会に必要か否か」になってしまう理由
化粧品のリリースだって、チャットGPTが書けてしまう?
これは、ある化粧品会社のPRの方から聞いた本当の話……新製品のリリースを、チャットGPTに書かせてみたら、多少の手直しだけで、それなりになってしまう。本当に、使えてしまうと。 もはや説明するまでもなくそれは、人間のように自然な会話ができる高度なAI(人工知能)チャットサービス。文章の完成度や感情も入ったような人間味のある表現は驚くべきもの。しかも無料! 何だかゾッとした。もうそんなことになっちゃっているのかと。所詮は“絵に描いたモチ”的に、実際の現場では使えないのだろうとタカをくくっていたし、それだってもっとずっと先の話と思っていたから。 確かに最近ハリウッドでは、脚本家と俳優の組合がAIの台頭で仕事を奪われ、地位が低下し、使い捨ての「道具」として扱われることに抗議。過去に例のない大規模なストライキとなった。 最初はピンとこなかったけれど、要はこういうこと。脚本は要素がそろえばチャットGPTが書いてしまうし、俳優は1日雇って外見や仕草、動作、声などをAIスキャンすれば、その生成データで作ったレプリカをくり返しくり返し半永久的に使用できるというのだ。つまりもう、そのエキストラには永遠に仕事は来ないということ。 これまでもCG技術で、エキストラの人数を何十倍、何百倍に増やすようなことはやってきたわけだが、もう次元が違う。 しかもこれ、エキストラだけの問題ではない。生成AIは、名のある俳優を若返らせたり老けさせたり、何でもできてしまうので、じゃあその分のギャラはどうなるの?との問題も。すでに現場では、亡くなった俳優を製作中の映画に登場させたりするAI活用が始まっているのだとか。組合側は、自分たちの生活ばかりか、尊厳まで奪われると反発している。 また、チャットGPTによる脚本づくりも、短期間で製作者の意図通り出来上がってしまううえ、感情のこもった台詞に、カット割り、表情まで指示できるので、当然大幅なコストダウンになる。しかも失敗は避けられるから、主流となるのは時間の問題とか。でもなぜそこまで可能なの? 実は既存の作品を大量に学習し、その膨大なデータを組み合わせてまったく新しい作品を作り上げる、本当にすごいことになっているのだ。「歴史は間違った方に向かっている。今私たちが立ち上がらなければ、本当に人間が機械に取って代わられてしまう」と彼らはデモで訴えているのだが。 約10年後、AIの普及でなくなる仕事は49%……そんな試算もある。実際にAIに仕事を奪われる可能性のある職種が10以上挙げられている。 ホテルや交通、通信などまで業種は幅広いが、まず何といっても一般事務。銀行窓口や受付なども含め、ごく一般的な事務作業がことごとくAI化できてしまうというのだ。たとえば冒頭で挙げた、化粧品のリリースの文書制作なども、ここに含まれ、その職種の中には、ライターも含まれている。理論的にはグラフィックデザイナーなども、その危険性あり? 一から何かをつくるクリエイティブな仕事は一応セーフと言われながらも、脚本家が脅かされているように、実は音楽の世界でも過去のヒット曲など、いろんな要素を生成AI化すると、ヒット間違いなしのまったく新しい曲が出来上がってしまうらしい。ああ、コワイ。コワすぎる。 じゃあ逆に“要る職業”とは何かといえば、医療関係、保育・介護関係、コンサルタント、カウンセラー、ヘアメイク関係など、人間に直接触れたり、一人一人が持つ問題に対峙する仕事ということになる。これはなるほど、説得力あり。 ここで何を言いたいか。そうした背景から今後は人間、社会に必要か否か、「要る人か、要らない人か」二つに一つ、必ずそうした基準で見られることになるという話なのだ。 撮影/戸田嘉昭 スタイリング/細田宏美 構成/寺田奈巳 Edited by 加茂 日咲子
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