死刑破棄「おかしい」 三春ひき逃げ殺人、無期懲役確定へ 最高裁が検察側の上告棄却
福島県三春町で2020年、面識のない男女2人をトラックではねて殺害したとして、殺人や道交法違反(ひき逃げ)などの罪に問われた本籍伊達市、住所不定、無職盛藤吉高被告(54)の上告審で、最高裁第1小法廷は死刑を求刑していた検察側の上告を棄却する決定をした。27日付。 裁判員裁判で審理された一審の地裁郡山支部の死刑判決を破棄し、無期懲役とした二審仙台高裁判決が確定する。5人の裁判官全員一致の結論。 判決によると、被告は20年5月31日朝、郡山市でトラックを盗み無免許で運転。三春町の国道脇で清掃活動をしていた同町の橋本茂さん=当時(55)=と三瓶美保さん=同(52)=を時速60~70キロではねて殺害し、救護せずに逃げた。
奉仕仲間、無念訴え
三春町で2020年、男が清掃作業中の男女2人をトラックではねて殺害した事件は無期懲役の判決が確定する見通しとなった。命を奪われた2人と共に「桜川をきれいにする会」で活動していた会長の影山初吉さん(76)は29日、福島民友新聞社の取材に「刑務所に戻りたいという目的で2人が犠牲になった。こんなひどいことをして無期懲役なのはおかしい」と無念さを訴えた。 事件は20年5月31日朝、同会が同町を流れる桜川沿いの道路で清掃作業をしている最中に発生した。道路周辺のごみ拾いを終え、集合場所に戻る途中で橋本茂さん=当時(55)=と三瓶美保さん=同(52)=はトラックにはねられた。同会メンバーは事件後、2人の命を奪った被告の厳罰を求めて署名活動を展開してきた。一審の死刑判決が破棄され、無期懲役とした二審判決が確定することに、裁判を傍聴してきた影山さんは「一審の裁判員裁判で時間をかけて死刑という判決を出したのに納得がいかない」と語気を強めた。 29日は命日に花が手向けられるようにと、影山さんは事件現場付近の草刈りをしたほか、近くに住む80代男性が竹の献花台を設ける姿が見られた。車がぶつかった衝撃でガードレールは曲がったままになっており、事件の悲惨さを物語っている。影山さんは「何を言っても2人は戻ってこない。残念だ」と憤った。
福島民友新聞